編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

身が引き締まる

 杉田水脈氏のLGBTの「生産性」をめぐる主張は批判をよんだが、再反論を特集した『新潮45』の主張のひどさは驚くほど。杉田氏をはじめ同誌執筆陣の主張にはこれまで私たちは批判を重ねてきたし、ようやく世間が認識し始めたのか、と感ずるのも事実だ。

 新潮社をボイコットする動きも出てきた。同業社として規模は違えど身が引き締まる。同社からの出版見合わせも検討しているという作家さんの存在には心を動かされた。本誌でインタビューさせてもらった『海を抱いて月に眠る』の深沢潮氏だ。

 書店でもヘイト本お断り、を打ち出したところもある。本誌9月14日号で取り上げた隆祥館書店は、以前からその方針を貫いてきた。同号の記事はその書店主・二村知子さん自らが執筆されたものだ。シンクロの元日本代表選手だった二村さんの知性とホスピタリティに、私は即座にファンになった。記事と関連したイベントに、たくさんの方が詰めかけてくれたと報告をもらった。久々に嬉しいニュースだ。

謙虚に議論し、応答したい

 今週号「新・政経外科」は、一部記述について編集部と筆者の佐高信編集委員とでやりとりがあった。冒頭6行の編集部批判の直後に「たとえば」と特集記事が例示されている。編集方針批判が展開されるべきところを、当該記事自体に瑕疵があるかのような記述になっているとして、同委員に編集部は手直しを依頼した。

 だが、委員は書き直しに及ばずとされ、委員の原稿の取り扱いルールに沿って全委員に意見を求め、掲載の可否を協議するよう要請された。

 委員の方は真摯に受け止め意見を示された。(このまま)「掲載すべき」「掲載すべきでない」、事実関係について部分修正すべき、などで、対応以外の論点も含まれていた。そこで佐高委員と小林とで話し合い、結果、原稿はそのまま載せ、後記で追記し、読者の判断に委ねることにした。

 原稿は編集部の特集の組み方を批判しているのであって、当該記事に国策協力への批判的言及があることを追記する。一方、委員が示された冒頭の批判は謙虚に議論し、応答したい。

元編集部員が当選

 先日の台風、またこのたびの北海道胆振東部地震で亡くなった方々に哀悼の意を表し、被災された方々にこころよりお見舞い申し上げます。読者の方からも状況を知らせるメールを戴いております。誌面で近く掲載する予定です。

 沖縄は今月が選挙月。本誌の元編集部員、内原英聡さんが沖縄県石垣市議選で自衛隊配備計画に反対を掲げて当選した。今回の選挙で配備を争点に強調したのはほとんど野党候補だけだったとか。「現行計画の白紙撤回を求める候補が上位を占めたことは意義深い」と内原さん。

 ここのところ会社を離れる方の挨拶が続いたので、退社後もこうやって地域社会で根づいて活躍する元部員の話を後記で届けることができるのは嬉しい。

 沖縄県知事選ではいよいよデマが流れ始めた。ちなみに今週号ルポにある竹中明洋元NHK記者は、金曜アンテナで報告された9月5日の植村裁判で(文中に言及はないが)証言に立った人物。本誌とは浅からぬ“縁”のある方のようだ。詳細はいずれ、また。

メディアの役割

 今週号の発売はちょうど自民党総裁選の告示日だ。安倍晋三首相と石破茂氏の一騎打ちは4日の時点でほぼ確定している。この間の安倍陣営の石破陣営への攻撃、「パワハラ」と評する意見があるが、たしかにハラスメントそのものに思える。執拗に相手を不快にし、尊厳を傷つけ、不利益を与え、脅威を与える。

 党員参加型の選挙なのに、オープンな場で2人が議論を闘わす場が設定できないというのはおかしい。これは自民党という組織の問題だろう。不透明で歪な選挙戦が前例になることが恐ろしい。

 30日投開票の沖縄県知事選でも同様な違和感を抱く。玉城デニー氏と佐喜真淳氏の事実上の一騎打ちといわれているが、佐喜真氏が討論会や、討論番組に出ない方針をとっているからだ。不確定な要素が入る場を避け、自分たちの思い描いたシナリオ通りに進む場にしか登場しない。そうなると隠された部分を明らかにしていくメディアの役割は重大だ。フェイクニュースへの対応も必要になってくる。制限時間は短い。