編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

25周年を迎えます

 今年の11月で本誌も25周年を迎えます。今週号と来週号では、創刊記念特集を組んでおります。2号に通底するコンセプトは「闘うメディアのこれから」。本誌以外のメディアの方々にも登場いただき、ジャーナリズムの差し迫った課題にどう取り組んでいくのか、議論をしています。

 最近、創刊の準備のためのチラシが残っていたということで読者の方が編集部に送って下さいました。「あなたは現在の“ジャーナリズム”に満足できますか?」「一切のタブーを排した新しい週刊誌創刊」。多少インクは色あせていますが、そのキャチフレーズを感慨深く眺めました。編集委員の顔ぶれを見ると、本多勝一さん以外の4人の方は鬼籍に入られています。時代を画する試みであったことを改めて実感します。

 この時に掲げた理念をどこまで実現できているのか、忸怩たる思いもありますが、今は前を向いて次の一歩を踏み出します。28日には記念集会を日本教育会館で開きます。お席に余裕があるのでよろしかったら是非!

誰ひとりとして

 重要ではあるけれど、つまらない記事が新聞の1面を飾った。「来年10月増税へ対策加速」(『朝日新聞』10月16日付)。消費税を予定通り10%に上げるので、景気の落ち込み対策を安倍晋三首相は10月15日、指示を出しましたよ、という内容だった。

 つまらない理由は2点。一つは来年の参院選の前には前言撤回で、「増税延期」を打ち出すだろうから。もう一つは、政策が単なる数字あわせで、一般の人たちの生活を守る対策にはなっていないから。経済成長の恩恵を受けなかった人は「よほど運がない」と言い放った財相が今も居座っているじゃない。

 この秋、一人の高校生が専門学校への進学を諦めた。ひとり親家庭で通えるだけの経済力がなかったからだ。高校生は通わせたい親と現実との板挟みで自殺を図った。幸い一命をとりとめたが、非力の社会の責任の一端を感ずる。

 これから、ますます政治状況は重要な局面になってくる。誰ひとりとして取り残さない──本誌もその視点を忘れない。

さっさと動き出す

 今週号の表紙は玉城デニーさんで単独インタビューも掲載している。本当は前週号の表紙になにかしら入れたかったのだが、台風の影響で交通状況が悪く、スタッフも揃わず叶わなかった。

 デニーさんのお顔が本当はこの時期、世の中にもっと露出していいはずなのに、なぜかそうはなっていない。官邸の圧力をはねのけて新しい時代に沖縄は入ったけれど、日本自体は悪政ここに極まれり、という感がする。

 内閣改造で「期待が高まった」と回答した人が8%という数字にも、もういちいち驚いていられない(10月6、7日『毎日新聞』実施の全国世論調査)。

 政治は足下から変えていくしかない。今週号の特集は、その意味でいい問題提起となっている。金子勝さん責任編集の「電力会社を解体せよ!」だ。飯田哲也さんをはじめ、その道の第一人者の執筆者を揃えている。平田剛士さんのブラックアウトのレポートも問題の根っこは同じだ。自分たちのことは自分たちで決めて、さっさと動き出す──これしかない。

再発防止

 佐高信編集委員が今週号をもって編集委員を退かれることになった。1994年6月10日号から編集委員を、2005年から10年までは本誌の発行人も務めてこられた。本誌がここまでやってこられたのは佐高編集委員の貢献があればこそ。こういう事態に至ったことは私の力不足ゆえと、佐高委員をはじめ皆さまにお詫び申し上げたい。

 8月3日号に検証記事を出した「盗用問題」に今週号「風速計」で言及されているが、権力を批判し、説明責任を求める私たちにより高い倫理性が求められていることはいうまでもない。

 検証記事中で、何の瑕疵もない当該書籍の共著者に多大な迷惑をおかけしたことに触れたが、今回発行人に就任した植村隆はその共著者の一人だ。当初からこの問題に強い危機意識を示し、真摯に受け止め反省すると共に二度とこのような問題が起きないシステム作りが必要であることを助言し、問題解決のために動いてくれた。今後は、発行人と協力しながら、本当の意味で再発防止を図りたい。