誰ひとりとして
2018年10月19日7:00AM|カテゴリー:編集長後記|小林 和子
重要ではあるけれど、つまらない記事が新聞の1面を飾った。「来年10月増税へ対策加速」(『朝日新聞』10月16日付)。消費税を予定通り10%に上げるので、景気の落ち込み対策を安倍晋三首相は10月15日、指示を出しましたよ、という内容だった。
つまらない理由は2点。一つは来年の参院選の前には前言撤回で、「増税延期」を打ち出すだろうから。もう一つは、政策が単なる数字あわせで、一般の人たちの生活を守る対策にはなっていないから。経済成長の恩恵を受けなかった人は「よほど運がない」と言い放った財相が今も居座っているじゃない。
この秋、一人の高校生が専門学校への進学を諦めた。ひとり親家庭で通えるだけの経済力がなかったからだ。高校生は通わせたい親と現実との板挟みで自殺を図った。幸い一命をとりとめたが、非力の社会の責任の一端を感ずる。
これから、ますます政治状況は重要な局面になってくる。誰ひとりとして取り残さない──本誌もその視点を忘れない。