編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

ありがたい

「創刊25周年特集はいつまで続きますか」。読者の方から電話をいただいた。記念特集をプレ企画として打った10月26日号から創刊月の11月いっぱい、つまり今週号まで創刊記念を表紙に明記している。でもなぜ、わざわざ? 怪訝に思っていると……。

 その方は本誌を読んだ後、購読を薦める意味で知人や友人に譲っているそうだ。ただ、創刊記念の号だけは手元に置いておきたい。それで別途購入することにしたので、いつまで続くのか聞いたのだと教えてくださった。「よいものは独り占めしてはダメ。みんなで分かちあわなければ」とも。そういえば「読み終えた本誌を電車の網棚に、それとなく置いていく」と先週号で仲誠一さんが投書欄に投稿されていた。ありがたいことだ。

 一方、先週号のこの欄についてお叱りも。麻生太郎大臣の発言(人の税金を使って学校に行った)を「いつものように悪意はないと思う」と評したことだ。悪意の有り無しが問題ではないし、批判されても仕方ない。お恥ずかしい。

あまりにもかけ離れた

 この手の話は無視するのがいちばんと思うのだが。今月17日、福岡市長選挙の応援演説に麻生太郎財務相が駆け付けて(国立大学出身の)北橋健治北九州市長のことを「人の税金を使って学校に行った」と批判したというのだ。

 いつものように悪意はないと思うのだが、私が驚いたのは、国立大学の授業料が私立に近づき高額化していることが問題になっているときに、大臣があまりにもそれとかけ離れた認識をもっていることだ。

 子どもの友だちは地方の国立大学に通っているが、休学を選んだという話を今週末聞いた。金の工面でバイト漬けの生活を送っていたが、来春兄弟の進学が予定されるので、一旦大学を離れて資金稼ぎに徹する魂胆だ。本人曰く「スネをかじろうと思ったときにはかじるスネがなかった」。

 深夜勤でヘロヘロ状態だが、勉強だけでなく演劇サークルにも情熱を燃やしている。そんな学生の実態を大臣はご存じないし、知ろうとも思わないだろう。そうそう福岡市長選は麻生氏が応援した現市長が勝った。

おかしなことばかり

 気になっていた裁判で驚くべき判決が下され、たじろいだ。

 一つは今週号で安田浩一さんが報告してくれている櫻井よしこ氏らへの名誉毀損裁判での札幌地裁の判決だ。本誌はこの裁判について、節目節目で記事を載せてきたので、「なぜ?」という疑問を抱かざるを得ない。来週号では、判決内容を精査した上で記事を出す予定なので、そちらも読んでいただきたい。

 もう一つは東京都教育委員会が教員に下した処分をめぐる裁判だ。東京地裁で勝訴したが、高裁での控訴審で逆転敗訴となった。第1回口頭弁論が開かれた後に結審したので、問題なく勝つだろうと原告側はみていたらしい。

 一連の裁判を傍聴したことのある私も、突然の展開についていけない。本誌でもこの案件は取り上げてきたが、都教委が校長に圧力をかけて教員に不利になる、事実でないことを言わせていたことが、裁判の過程で明らかになった。その当該の人物が、その後昇進していたということも今回聞いた。本当におかしなことばかりだ。

「移民」なのか

 ある国の駐日大使館で働いていたときのことだ。領事部付きだったので、いろんな人が出入りした。ビザを求める人、日本に滞在してパスポートの更新を求める人たち、結婚の届けを出す人たち……。イスラム教では4人の妻を持てることを説明すると、一人去っていった日本女性もいた。

 なかには、自死した人もいた。警察の関わる案件になり、分厚い書類が作られた。“タコ部屋”で毎日肉体労働をして、得たお金の大半は祖国の家族に仕送りをしていた。亡くなる直前、仲間と飲食を楽しんだ時の写真が添付されていた。静かに笑っていた。自死の原因はわからずじまいだった。

 外国人労働者の受け入れをめぐる法案は、「移民」なのかそうでないのかで議論になっている。いずれにせよ働く人たちのことが軽視されていて、気がかりだ。

 ところで11月2日号特集と今週号の対談記事2本は「文字を大きくして」という読者の方からの要望で、ワンサイズ大きくしてみた。いかがでしょうか。

新しい風

 東京・日本教育会館で10月28日、小社主催で「『週刊金曜日』創刊25周年記念集会」が行なわれ、約500人の方が参加された。本多勝一編集委員が体調不良で欠席、メッセージ代読となったが、その他は無事に終わった。

 新体制決定後ということで告知が10月5日号、当日まで20日ほどしかなく、不安で一杯だった。しかし、いろんな方が集会を知らせるビラ配りを手伝ったり友人に声をかけて下さったり、ゲストがゲストを紹介して下さったりした。まさに連携プレーにつぐ連携プレー。集会後は「新しい風を感じた」「来てよかった」という声が小社に寄せられた。

 その前日には、読者交流会を開き35人の方が参加くださった。創刊号以来という“濃い読者”に混ざり、読み始めたばかりという方、大学生の方もスピーチで盛んな拍手を受けていた。創刊準備から関わっているJさんの話にはいつもながら圧倒される。当日問合せをいただいた方には案内ができずに失礼しました。また、お会いしましょう。