編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

17歳最後の贈り物

 衆院沖縄3区補選で屋良朝博さんが島尻安伊子さんを破り初当選を果たした。本誌でも執筆いただいたことがある屋良さん。その抜群の調査能力に期待したい。同じく大阪12区では、共産党を離れて宮本岳志さんが捨て身の出馬をしたが、及ばずだった。結果を受けて挨拶した宮本さんのすがすがしいこと。ボランティアが全国から1000人集まったというのも頷ける。これは終わりではなく、何かの始まりに違いない。宮本さんの1日も早い国政復帰を願う。

 投票日、外に出がけに手紙入れから入場券をとったら、17歳の子どもあてにも来ている。「えーっ、ホント?」。驚きつつも本人はまんざらでもない様子。予定がなかったはずなのに意中の人はすでにあって、迷いなく投票をした。

 子どもの誕生日は翌日。選管に確認したが、民法上は1日前に誕生日を迎えることになっているから、なのですね。「17歳最後の贈り物」となったが、本人は何と理解しているのだろう。学校でいい加減なことを言ってなきゃいいけど。

統一地方選

 週末、実家に戻った。統一地方選の真っ最中なのに選挙カーを見かけない。実家のある中心街は住んでいる人も少なく、効率が悪いせいか。周りにある建物は取り壊され、高齢の住人は次々といなくなってしまった。

 実家は父がこの春亡くなり母だけとなってしまった。これまでは期日前投票であれば近くの公民館が利用できるということで、杖をつきながら天気のいい日に2人で投票に出かけたものだった。

 だが、母に聞くと今回の選挙には行かなかったという。選挙公約がみあたらず、「だれにいれたらいいか、わからんさ」という。新聞を一紙に絞ったが、公約がないとは腑に落ちない。「チラシが入ってくるから見てね」と奨める。

 東京に戻ったら、知り合いの個人店主から〈妻が区議会議員に立つことになったのでよろしく〉との手紙が届いていた。消費税率引き上げについて意見を聞こうと思っていたが、忙しくてそれどころではないだろう。子育て支援や教育の充実? 政策はなかなかよさそうだ。

新しくスタート

 昨日の雨があがり、今朝は気持ちのよい青空が覗く。地域の学校の前に「入学式」の看板が立つ。通勤途上、すれ違う中学生の表情が眩しい。

 弊誌は4月から新編集委員を迎えたが、読者の方々から早速、激励や感想を戴いた。「崔善愛さんには詩作の内容も含め、全面的に賛同いたします」(埼玉県のUさん)、「想田さんのドキュメンタリー映画の大ファンです。……SNSでの過激な発言とは正反対の実像、ユーモラスで暖かい人間性、にも惹かれています」(大阪府Nさん)……。

 前編集委員の石坂啓さんの原画プレゼントに際しては、多数の感想やご意見も頂戴している。石坂さんはもちろんのこと、全社員で共有させていただく。弊誌変革のヒントが詰まっているように思う。

 社内では有休取得希望日を書き込む用紙が配られた。労働基準法改正に伴い、年10日以上の有休のある労働者に年5日時季指定で取得させることが、企業に義務づけられたからだ。まずは自分の足下から。やばっ、提出期限、過ぎてしまった。

井上明久氏の不正疑惑

 井上明久東北大学元総長の論文不正疑惑について今週号アンテナで三宅勝久氏が報じている。1997~2000年にかけて井上氏が発表した論文3本について、日本金属学会欧文誌編集委員会は「科学的に不適切な過失」があるとして撤回したというのだ。

「ようやく」というのが率直な感想だ。2013年と15年、本誌で井上氏の疑惑を指摘する連載を掲載してきたからだ。大学トップにいた氏の不正を大学に告発をした勇気ある教員の方々を思い出す。

 連載にもあったが、大学当局は彼らの賞与の査定を下げ、退職後の名誉教授の称号授与を保留にし、理由なく退職金の返納を要求するということまでやってのけた。

 巨額のプロジェクトをぶち上げ、そこに公的資金がつぎ込まれる。そのカネでスタッフを雇い、一気に研究を進める。だからといって、必ずしもそれ相当の結果が出るわけではないだろう。井上氏が研究した金属ガラスが、まさにその例だったのではないか。

 今後の展開を注視したい。