編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

消費税

 梅雨空を見上げる。雨脚が強い。ダメか……。月曜日から満員のバスと電車で通勤だ。自転車で行き帰りできる日が待ち遠しい。

 1月に始まった通常国会も残りわずか。週末はG20が待っているから、安倍晋三首相は気もそぞろ? いやいや、消化試合でいいはずがない。

 ここにきて注目の年金問題は、財政検証が例年より遅れて選挙後になるということで、議論の材料が揃わない。もちろん政争の具にすることは避けるべきだが、それってないよな。予算委員会はずっと開かれないし、選挙に向けた与党の戦略はわかりやすすぎて呆れるばかり。でも安倍内閣の支持率はほぼ横ばい。

 消費税について安倍政権は10%への増税を打ち出した。小誌は“「5%以下への減税」を求めることに賛成?反対?”というリレー記事を展開してきた。

 今週号の対談で、雨宮処凛、中島岳志両編集委員は減税の必要を強く説いている。だが、野党の合意は、凍結どまりとなっている。今週号でリレー記事は一区切りとします。

知恵を広める

「逃亡犯条例」改正案をめぐる、香港の立て続けのデモには目を奪われた。本誌今週号で報告している。人々の抗議は改正手続きの無期限延期を引き出したが、行政長官の退任を求めるステージに入った。

〈自由は自分たちで守っていく〉という気概、おおいに見倣いたい。東京・渋谷でも、香港の人々を支援する集会が行なわれ、道行く若者、外国人も参加して、これまでにない直接行動になったようだ。

 先週末には「年金2000万円不足問題」に関連したデモも東京・日比谷で行なわれた。こちらも誌面で取り上げたが、このデモ、ホリエモンがツイッターでくさしていた。批判の意味は不明だ。

 国会パブリックビューイング代表の上西充子さんの話題の書『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)を開く。「若者の思考の枠組みを縛」る呪いの言葉に、〈デモなんかで何が変わるの?〉がある。「デモにも行かずに何かが変えられると思うの?」と切り返せるよって言う。そういう知恵を広めること、日本では重要だと思う。

身が引き締まる

 厚生年金受給世帯で平均月5万5000円、30年間で2000万円収入が不足するという金融審議会市場WG報告書の数字が波紋をよんでいる。そんなに貯金できないよ、と個人的にはため息。

 6月10日、テレビ中継された参院決算委員会総括質疑でのやりとりだ。小池晃議員(共産)が問いただすと、背広のボタンをかけながら安倍晋三首相が答弁に立つ。首相:「……平均値を果たして出すことに意味があるのかどうかということも議論しなければいけないわけでございまして……」。苦し紛れに数字自体を陳腐化する。小池議員:「平均の数字を出してきたのは政府ですよ。……だからあなたたちの議論に基づいて私は指摘をしているんですよ」。呆れて問い返す小池議員。その姿を隣席から見上げ、同意するかのように小さく頷いているのは、あの西田昌司議員(自民)じゃないか。

 小池議員によると不足分は教養娯楽費と交際費。平均値で前者は月2万5000円。本誌の毎月の購読料は……。身が引き締まる。

学ぶことばかり

 今週号36頁で登場いただいた駿河敬次郎医師からお電話をいただいたのは連休明けの校了日だった。

「今日、×時から出かけなければいけないので、いらっしゃるのは×時にお願いしたい」。

 駿河先生には休み前、棒ゲラで先生の発言部分の確認をお願いしていた。10連休明けだったので編集部を留守にするのに躊躇した。筆者の村上朝子さんにお任せするつもりだったが、先生の優しいお声を直接聞くと、どうにも参上しないわけにはいかなくなった。

 村上さんと、先生を紹介してくださった永井元さんとドキドキしながら診療所にうかがうと、先生が一つずつ発言について確認をされていく。

〈この表現で、読者に正しく伝わるだろうか、こっちのほうが適切ではないだろうか〉

 丁寧に問うていく。私たちも意見を言う。作業が終わって追加で先生の写真を撮らせて貰う。〈携帯でとれますからね〉。見ると先生の携帯電話がガラケーからスマホに変わっていた。駿河医師は98歳。今回の取材、本当に学ぶことばかりだった。