編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

忖度しない

 新型コロナウイルス(COVID─19)について政府の専門家会議による見解の発表が24日、ネットでライブ中継されていた。

 連休明けには会社やお店も再開される。このタイミングで感染拡大を最小限に食い止めるための対策は不可欠だ。私も釘付けで見た。

 普通の風邪やインフルとの見極めが難しいわけだが、服薬については言及がなかった。厚労省のHPを開いてみる。「国民の皆さまへのメッセージ」とあってずっこける。「日本にいる皆さま」のほうが適切ではないのか。

 それはおいて、解熱剤の使用については言及があった。結局、一般の医療機関でも感染が疑われる患者を受け入れる場合もあるとのこと。病院に行くべきかも含め、悩むところだ。

 25日午後、政府は基本方針を決定したが、政府でなければできないことをやってほしい。「クルーズ船」への政府の対策は、危機管理の失敗例として歴史に残るかもしれない。「ウイルスは忖度しない」。作家・平野啓一郎さんの一言は行政への不信を言い当てている。

コーヒーの味

 日々新たな感染者の数字が速報される新型コロナウイルスによる肺炎(COVID―19)。ようやく政府は専門家会議を開催し、テレビニュースでも取り上げられたが、安倍晋三首相が在席したのは3分ほど。

 自ら引き上げたのか、役に立たないから退席いただいたのかわからないが、それ自体がツイッターなどで話題になってしまうという始末。最新の調査では内閣不支持率が支持率を上回ったと言うが、この政権のガバナンス能力のなさは底なしに思えてくる。

 一方、厚生労働省から相談や受診の目安が発表された。風邪の症状や37・5度以上の発熱が4日以上続く場合など、相談が奨められるという。家人が長期出張にいく前に、体温計を探していた。子どもが小さいときに耳で計れるものとか試したが、残っているのはシンプルな体温計だけ。結局、行きがけに購入して貰った。

 私自身は、体温計を使わなくても、毎朝飲むコーヒーの味で熱があるかどうかわかる(と思っている)。今日はOK。さ、校了作業だ。急がねば。

コロナウイルス

 新型コロナウイルスによる感染拡大がつづく。感染をおそれるあまりの過剰反応による差別的な対応なども問題になっている。メディアの報道姿勢は重要だ。

 長野県・佐久総合病院の色平哲郎医師からこんなメールが届いた。「病院へ行かないという選択を!」

 例えば新型コロナウイルスの検査キットは一般の医療機関にはない。インフルエンザにしても確実な検査とはいえない。それなのに、検査を求めて受診するのは、学校や会社を「公的に」休むために必要だから。

「一番問題なのは、治療の要らない軽症者が受診することで、重篤な疾患を抱えている患者さんがたくさんいる医療機関でウイルスをばらまいてしまうこと」という。

 確かに私もインフルの可能性のある症状が出たら、社内の人に感染する危険性があるからと医療機関に駆け込んでしまう。様子をみてひどくならなければ、症状がおさまるまで休んでいればいいということだ。

「診断のために医療機関を受診するのはやめましょう」。社会の流れとしてはそうあるべきだろう。

信じがたい

 あれ、鼻がムズムズする。スギ花粉がそろそろ飛び散る季節だ。インフルエンザもいまだ油断がならない。編集部はA型にやられたばかり。さらに新型コロナウイルスによる新型肺炎の脅威にもさらされている。困ったことだ。

 ウイルス対策には手洗い、免疫力を高めるための十分な睡眠とバランスのとれた食事。でも、これが実は一番難しい。母方の大叔父がスペイン風邪で若くして亡くなっている。東京に出てきて学業を終えて社会人として勤めだしたところだった。一人暮らしで栄養状態が悪かったのか。

 今週号の天笠啓祐氏の記事によると、新型コロナウイルスは変化しやすい。変化前に封じ込めることができるか。日本政府の危機管理能力のなさは、昨年の自然災害で見せつけられたばかりだ。今回も後手に回っている。

 と思えば、伊吹文明元衆院議長から「緊急事態に個人の権限をどう制限するか。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」という発言も飛び出したという。政治家の発言とは信じがたい。