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あの人の名前

「見せしめ」でなければ何だというのだろう。いや、「見せしめ」でないとすれば、その闇はもっと深い。

 ジャーナリストである安田純平氏への外務省の旅券発給拒否問題だ。トルコからの5年間の入国禁止処分を理由に、発給拒否処分を課しているのだ。

 今週号の解説記事で佐藤和雄氏が主張するように、トルコへの渡航が問題なら、トルコに行くことを制限した旅券を出せば済む話だ。実際にそういう旅券は存在する。

 私も、A国駐日大使館領事部で働いている時、B国への渡航を制限する条件付きの日本人の旅券を扱ったことがある。制限があっても、B国での扱いが不利になるということもなかった。当時は不思議に感じられたが、今から思えば当たり前のことだ。観光ビザの申請だったが、すんなりと発給されたことを覚えている。

 先ほどの解説記事の最後の部分を読んで背筋がぞっとした。また、あの人の名前が出てきたからだ。政府に楯突く人間をあぶり出し、排除するあの人だ。