編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

桐野夏生さん

『日没』を読んで以来、桐野夏生さんの本にはまっている。最近読んだのが『路上のX』(朝日文庫)。一家離散や義父の虐待など家庭の事情から東京・渋谷の街をさまよう二人の少女が運命的に出会い、そこからさまざまなストーリーが展開される。小説では、ネグレクト、DV、レイプ、JKリフレなど、少女たちを取り巻く問題が描かれている。自らも中高時代、渋谷の街をさまよっていた経験を持つ仁藤夢乃さん(Colabo代表)は解説で、「私たちの言葉にならない想いや経験を言葉にしてくれた桐野さんに、心から感謝したい」と書いた。仁藤さんから話を聞いた桐野さんは、「現実は小説より残酷ね」と言ったそうだ。

 東電OL殺人事件を扱った『グロテスク』、連合赤軍事件をテーマにした『夜の谷を行く』など、桐野さんの作品には社会問題を鋭くえぐるものが多い。しかも、こうした作品の主人公は女性たちだ。

 今週号では、桐野さんのインタビューを掲載した。いまの言論状況について語ってくれている。(文聖姫)