編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

アントニオ猪木と北朝鮮

 空手チョップで有名なプロレスラー、力道山は日本植民地時代の朝鮮半島北部で生まれた。本名は金信洛。1989年に訪朝した際、力道山の娘、金英淑さんにインタビューした。夫は体育相も務めた朴明哲氏で、当時の取材メモには、「夫が大臣クラスの人だけあって、身なりもいい」などと記されている。

 1日に79歳で亡くなった元プロレスラーで参議院議員だったアントニオ猪木さん(本名・猪木寛至)は、移住先のブラジルで力道山にスカウトされ、プロレス界に入った。そんな縁もあって、94年から2017年まで33回訪朝し、日朝国交正常化を模索し続けた。1995年には平壌の綾羅島メーデー・スタジアムで新日本プロレスの興行としてスポーツ・文化祭典も開いた。2013年11月には北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との間で自身が理事長を務めるNPO法人の平壌事務所開設で合意した。この時、約1カ月後に処刑された張成沢氏とも会談。前出の朴明哲氏は張成沢派と言われていた。(文聖姫)