編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

親子

 白のダウンジャケットに黒のパンツ、赤い靴を履いた少女が金正恩・朝鮮労働党総書記と手をつないで、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を視察する写真を11月19日、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のメディアが伝えた。18日に実施された発射実験を報じた際に公開したものだ。「愛するお子様と女史と共に」実験を指導したと報じていることから、少女は金総書記の娘と見られる。金総書記の子どもが公開されるのは初めてだ。

 韓国の「聯合ニュース」によると、金総書記には2010~17年に生まれた3人の子がいるとされ、1人目が息子、2人目が娘、3人目は性別不明だ。北朝鮮指導部が金総書記の娘を公開したことは今後の後継問題と関連して注目される。ただ、北朝鮮でかつて女性が「最高指導者」に選ばれたことがないことや、まだ幼いことから、彼女が「後継者」と見るのは早計だろう。でも、なぜあえてICBM実験現場に同行させたのだろうか。私にはそっちの方が気になる。(文聖姫)

「闘うジャーナリスト」の末席に

 東京造形大学名誉教授の前田朗さんからインタビューの申し込みがあったのは、編集長になりたての昨年11月のことだった。『月刊マスコミ市民』で連載している「ジャーナリズムが若かった頃」に掲載したいのだという。ヘイトスピーチやヘイトクライムに関する著書が多く、差別問題にも取り組んでいる前田さんからの依頼だったので、お引き受けした。

 そのインタビュー連載が最近、『ジャーナリストたち 闘う言論の再生を目指して』(三一書房)という1冊の本にまとめられた。9人のジャーナリストが登場する。差別や歴史修正主義と闘い、沖縄問題に取り組み、レイシストたちに立ち向かってきた「闘うジャーナリスト」たちだ。私もその末席に加えていただいたことを光栄に思う。9人のうち女性が5人である点もうれしい。私が若い頃、女性ジャーナリストは少なかったが、いまや業界で活躍する女性も増えた。その先駆けとなった方々だ。今後のジャーナリズムを考えるためにも、ご一読をお薦めする。(文聖姫)

創刊29周年にあたって

 本誌は11月5日に創刊29周年を迎えた。今週号は1400号である。ここまで来られたのも、読者のみなさんの支えがあったからだ。改めて感謝申し上げたい。記念号で何を特集すべきか、編集部で討議を重ねてきた。

 統一教会をテーマに有田芳生さんと青木理さんに対談(9月9日号掲載)してもらった際、公安警察に関する興味深い話を聞いた。公安情報と政治の関係をいろんな角度から斬り込んでみてはどうか――ということになり、まず、『日本の公安警察』(講談社現代新書)を書いた青木さんの話を聞いた。日体大の清水雅彦教授からは、日本学術会議の任命問題で面白い話が引き出せた。自衛隊の情報活動については、その道に詳しい共同通信記者の石井暁さんにインタビューした。そして、出会い系バー通いを『読売新聞』に書かれた前川喜平さんにも話を聞いた。いずれも緊迫感あふれる内容だ。浮かび上がってくるのは、日本が監視社会になりつつある、いやもうなっているのではないかという懸念である。(文聖姫)

梨泰院の悲劇

 日本人女性2人ら外国人26人を含む154人が死亡、133人が負傷(10月30日現在)する大惨事となった。日本でも人気の韓国ドラマ「梨泰院クラス」の舞台にもなったソウル市の繁華街、梨泰院で29日夜、人々が折り重なるように転倒する事故が起きた。幅約4メートルの狭い道に大勢の人が詰めかけた。韓国の通信社「聯合ニュース」が配信した事故直前の現場写真を見ると、まるで満員電車の中のようで、身動きが取れない状態であったことがわかる。

 梨泰院では新型コロナの影響で中断していたハロウィーンイベントが3年ぶりに開催された。大勢の若者たちが押し寄せることは予想できたはずだ。犠牲者の多くが10~20代だという。

 日本でも21年前の2001年7月、兵庫県明石市の歩道橋で花火大会を見に来ていた子ども9人を含む11人が死亡し、247人が重軽傷を負う事故が起きた。このような事故が二度と起きないよう、事故原因の徹底的な究明が望まれる。(文聖姫)