編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

倍賞千恵子さん

「なんか、何かの記者会見みたいね」。倍賞千恵子さんはそう言うと笑った。11月8日、新横浜プリンスホテルの会議室で、倍賞さんと夫の小六禮次郎さんにインタビューした時のこと。コロナのことも考えて、お二人には机を挟んで座っていただき、私はだいぶ離れた場所にスタンバイした。対面の形になったことで、確かに記者会見のような格好になった。しかもご夫妻。倍賞さんは「結婚何周年記念?」などと冗談を飛ばす。私がいささか緊張していたから、おそらく場をなごませるためだったと思う。このやりとりで一気になごみ、その後のインタビューが、時に爆笑を交えながらスムーズに進んだことは言うまでもない。

 今年最後となる今号では、超高齢社会を鋭く描いた映画『PLAN 75』の主演俳優、倍賞さん夫妻、監督の早川千絵さんにインタビューした。ジャーナリストの平舘英明さんには、介護の実態などについてルポしていただいた。

 今年もご購読ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。(文聖姫)

安保政策の転換

 本誌が読者に届く頃には、日本の安全保障政策が大きく転換しているかもしれない。年内に改定される安全保障関連3文書のことだ。政府は今日(16日)の閣議決定を目指していると『朝日新聞』が12月10日に報じている。一番の注目点は、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有を明記することだ。また、2027年度に安全保障関連経費の予算水準がGDP(国内総生産)の2%に達することを目指すとされる。中国、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)、ロシアといった周辺国の認識も明記される。

 今号では「安保大転換」と題し、安全保障関連3文書改定問題について特集した。本誌連載の「半田滋の新・安全保障論」でもおなじみの防衛ジャーナリスト、半田滋氏に文書改定の隠された理由について寄稿してもらった。そして、安倍晋三元首相の秘書官として防衛政策の転換に伴走した島田和久・前防衛事務次官にも登場していただいた。「安保大転換」を進める側の論理について、率直な話を聞くことができた。(文聖姫)

サッカーワールドカップ

 こんな番狂わせなら大歓迎だ。カタールで行なわれているサッカーワールドカップ(W杯)予選リーグで、韓国が強豪ポルトガルを2―1で下し、決勝トーナメントに進出した。ガーナ戦に負けた時点でほぼ16強入りはあきらめていただけに喜びもひとしおだった。日本も強豪スペインに勝って、グループ1位で予選リーグを通過し16強入り。韓国代表の李剛仁は、スペインのプロサッカーリーグで共にプレーする日本代表久保建英から、8強で会おう、と言われたエピソードを聯合ニュースに披露した(今号が出る頃には結果が出ているが)。日韓選手同士の友情に拍手だ。

 1966年のイングランド大会で、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)がイタリアを破って8強入りしたことは「W杯史上最大級の番狂わせ」として、いまでも語り継がれている。アジアがどんどん強くなる証しとして、次回大会にはぜひ日本、韓国、北朝鮮に揃って出場してほしい。そして、いつの日か、南北統一チームでW杯出場を果たしてほしい。(文聖姫)

ARMY話

 先日、友人たちと東京・新宿で飲んだ時のこと。若い女性店員の名札を何気なくみると、そこには「ARMY」の4文字が。ARMYとは、韓国の男性アイドルグループBTS(防弾少年団)のファンのことだ。私も実はARMYである。なんだかうれしくなって声をかけたら、「誰のファンですか?」と聞かれたので、「ジン」と答えた。「もうすぐ軍隊行っちゃうんですよね~? 私はジョングクです」と彼女。こんな会話が新宿の居酒屋でできるなんて最高!(ちなみにグループ最年長のジンの入隊日が今月13日に決まった)

 最初はK―POPに興味を持ち、そのうち韓国全般が知りたくなって留学した女子大生、逆に日本のアニメやJ―POPが好きで日本への留学を目指す男子大生……こんな例はいくらでも見つけられる。歴史問題で日韓関係がギクシャクしていることなど、彼・彼女らにとっては何の障壁にもならないのだろう。そんな素直な気持ちで隣国と接する若い世代が育っていることに希望を感じる。 (文聖姫)