編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

憲法九条

 今号の特集は「いまあらためて考える九条の会」。「九条の会」、もっと言えば、「九条」について、きちんと考えておきたいという思いがありました。

「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」――戦争放棄を定め、戦力を保持しないことをうたった九条は、きな臭いいまこそ輝きを増します。河野洋平×中島岳志スペシャル対談もお見逃しなく。岸田文雄政権や憲法について、河野さんの指摘は読み応えがあります。

※今号の表紙右上の年数が「2022年」になっていることが4月24日(月)に判明しました。表紙は発売前週の金曜日(今号は21日)に校了するため修正できませんでした。「2022年」は「2023年」の誤りです。お詫びして訂正します。(文聖姫)

爆発物投げ込み事件やらJアラートやら

 4月15日、衆議院補選の応援演説のため和歌山・雑賀崎漁港を訪れていた岸田文雄首相が立っていた場所近くに爆発物が投げ込まれた事件。安倍晋三元首相が銃撃された昨年の事件を思い出した人も少なくないだろう。逮捕された24歳の男性を取り押さえた漁民の一人に、本誌編集部員の本田雅和が電話でインタビューした。事件当時の生々しい状況を6面のアンテナ欄でお伝えした。

 13日朝、携帯電話から何度も鳴る防災速報のサイレンに驚いた人も少なくなかったのではないか。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のミサイル落下を警戒するものだ。全国瞬時警報システム(Jアラート)で北海道に避難も呼びかけられたが、自治体などに向けた緊急情報ネットワークシステム(エムネット)で、落下の可能性がないことが通知された。Jアラートについては本誌でも検証していきたいと思っている。

 先週号でお伝えした「読者モニター応募要項」は来週号の奥付に掲載する予定です。(文聖姫)

徴用工問題

 今週号では韓国の「徴用工解決策」を特集した。私との対談(14~17ページ参照)で、ジャーナリストの青木理さんが紹介していた『世界』5月号の李鍾元・早稲田大学大学院教授のインタビュー「日韓逆転のなかの徴用工問題“解決策”」を読んだ。いろいろ示唆に富む内容だったが、「今回の尹(錫悦)大統領の動きを見ると、日韓関係を『未来志向』で立て直すと訴えつつ、彼の描く『未来』が『新冷戦的』であるのも気になります」という李教授の言葉が特に印象に残った。

 確かにそうだ。今回の解決策に関しては、まず北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)や中国の軍事的脅威に対抗するため、日韓、日米韓の結束が必要だとの認識が背景にあると思う。しかし、そのような思考に陥れば、最終的には対立しかない。金大中大統領はむしろ、東北アジアの平和地帯化を構想して日韓関係を改善し、南北首脳会談を実現させた。その先には日朝首脳会談もあった。「冷戦」が何ももたらさなかったことは歴史が証明している。(文聖姫)

牛窓

 3月24日から26日まで岡山に行きました。26日にできた岡山読者会に参加するためです。前日には瀬戸内市牛窓を訪れました。ここに住む本誌編集委員で映画監督の想田和弘さんに案内していただきました。

 牛窓は、朝鮮通信使が江戸に向かう途中、しばしば立ち寄った場所としても有名で、以前から一度は行きたいと思っていました。町内には、朝鮮通信使について知ることのできる海遊文化館があります。この建物、実は旧牛窓警察署です。この町には、このように古い建物をリノベーションして再利用しているところがいくつかあります。旧牛窓診療所はカフェやケーキ屋、食品店などが入るウシマドテレモークと呼ばれる複合施設に変身しました。

 牛窓の魅力に惹かれた都会からの移住者も結構います。アクセサリー店やパン屋を営んでいる人も。ドイツで修業を積んだ店主が営むパン屋には行列ができていました。牛窓では時間がゆったり過ぎる感じ。きっとそれも魅力の一つなのでしょう。(文聖姫)