編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

『不便なコンビニ』

 韓国で累計150万部を売り上げ、いまでもベストセラーの小説『不便なコンビニ』を、今回ソウルに行った際に購入した。ソウルの下町で亡き夫の遺産で建てたコンビニを営む元教師の女性と、彼女が駅でなくした財布を拾ってくれたことが縁でコンビニの深夜シフトの店員として雇ったホームレスの男性が主人公。記憶を失い言葉はたどたどしいが、誠実で優しい彼によって、さまざまな悩みを抱える人々が救われていく。

 実は物語の舞台となったコンビニを経営するのは、大学院時代の後輩とその夫だ。商売が軌道にのり、昨年2店舗目もオープンさせた。その2店舗目に行った。日本のビールやワイン、肉や野菜類なども売っている。コンビニというよりスーパーといった感じだ。客はひっきりなしに訪れていた。後輩に小説がなぜ人気なのか聞いた。「コロナ前夜を描いたからでは? みんな生きづらくなっていたから」。なるほど。確かに心が癒やされる物語が続く。日本でも最近、翻訳本が小学館から刊行された。(文聖姫)

「大韓民国」

 7月27日は朝鮮戦争の休戦協定が調印された日だ。今年は70年の節目である。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)では、この日を「戦勝記念日」として祝う。70周年の今年は、例年より盛大に祝うことが予想される。焦点は、軍事パレードでどんな最新兵器がお披露目されるかだ。12日には固定燃料式の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功したと、国営メディアが報じており、もしかしたら、この新型ミサイルがお目見えするかも。

 そんな中、金正恩朝鮮労働党総書記の妹、金与正党副部長が談話で、韓国のことを大韓民国と呼んだことが話題になっている。しかも、2日連続だ。談話は米軍のスパイ行為を非難したもので、それを否定した韓国軍を「《大韓民国》合同参謀本部」などと名指ししているのだ。北朝鮮は韓国を南朝鮮と呼ぶのが普通で、正式の国号で呼ぶことは異例だ。韓国の聯合ニュースは、「敵対的共存」に重きを置いた「二つの朝鮮」政策への変更ではないかと分析している。(文聖姫)

読者モニター制度

 6月2日号から読者モニター制度を始めました。11月に迎える創刊30周年企画の一つです。9人のモニターの方々が毎週、(1)その号を総合的に評価、(2)良かった記事を3本あげる、(3)良かった連載を1本あげる、(4)今後取り上げてほしいテーマを記す――という質問に答えていただく形で進めています。みなさん、毎回、熱心に書いてきてくださいます。良かった記事をあげてくれるだけでなく、その感想が熱い。「さすが『週刊金曜日』の読者のみなさん」だと、私自身も胸が熱くなります。また、こちらが想定していなかった記事が上位に評価されるなど、意外性も面白い点の一つです。編集部と読者の良い意味でのギャップも、今後の誌面作りに生かせると感じています。

 いまは社内で共有するだけにとどめていますが、せっかくの読者のご意見ですから、誌面で発表することも考えています。これはあるモニターの方からの願いでもあります。読者に支えられる週刊金曜日。今後ともよろしくお願いします。(文聖姫)

ソウル行き

 7月15日からの連休を利用して韓国・ソウルへ行くことにした。約3年5カ月ぶりである。夫妻でコンビニを経営する大学院時代の後輩など友人たちにも会う予定だ。韓国に「Dosirak(ドシラク=弁当)WiFi」というのがあると聞いて、現地の20代後輩に連絡して手続きしてもらった。料金は1日わずか2500ウォン(約273円)だ。いつも日本のWi-Fiを利用していたが、ソウルで申し込む方が断然安い。

 本誌と提携する韓国の週刊誌『時事IN』の高濟奎元編集局長らにも会う。そういえば、2018年に1週間ほど時事IN本社で研修した。すでに自社で版下作業をしていた。驚いたのは校了時間直前に、編集局長のひと声で表紙のデザインを変更したことだ。社内で制作しているからこそ可能だった。現在は『週刊金曜日』も表紙や版下は自社で制作する。だからこそ1年前に安倍晋三氏銃撃事件が起きた際、表紙のデザインを素早く変更することができた。高元局長らに会ったら、そんなことも報告したい。(文聖姫)