編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

読者との距離

 2018年に週刊金曜日に入って一番驚いたのは、読者との距離の近さでした。会社にかかってくる電話を取ると、この記事が良かったというお褒めの言葉や、この論調はけしからんというご批判などを情熱を込めて話してくださるのです。読者会がある雑誌など、そうあるものではありません。その読者会にもいくつかお邪魔しました。それぞれの読者会に特徴があって、誌面を中心に議論される場合もありますが、現在の日本の状況とか、普段考えていることを話し合ったりと、話題もさまざまです。

 このたび、本誌の創刊30周年に際し、北海道の五つの読者会が本誌編集委員・崔善愛さんのコンサートを企画してくださいました。詳細は9月15日号の裏表紙と「ヒラ社長が行く」をご覧ください。私も連休を利用して参加します。北海道のみなさんにお会いできるのを楽しみにしております。

 そして、11月2日には東京・千代田区の教育会館で大集会があります。こちらもぜひ、いらしてください。(文聖姫)

NO LIMIT

 今週号掲載の雨宮処凛さんと松本哉さんの対談が面白い。今月22日から10月1日まで東京・高円寺で開催される「NO LIMIT」がテーマなのだが、松本さんの行動力にはとにかくまいった。互いに闘わない環境を作ろうというのが目的で、さまざまなイベントが企画されている。

 松本さんは言う。「そうやってみんなで遊び歩いてみると、結局『一緒じゃん』って。そしたら、別に喧嘩する必要もないし、友だち圏を世界中に広げた方がみんな幸せなんじゃないかな、と考えました」まさにそうだ。でも、世界中で争い事が絶えない。日本だって、中国や北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との関係は悪化するばかりだ。でもそれはあくまで国家同士の問題だ。そこに住む人々は、一緒に遊んで、一緒に飲んで、一緒にバカ騒ぎすれば、それだけで仲良くなれる。徴用工問題などで日韓関係が悪化していた時でも、K―POP大好き、日本のアニメ大好きな日韓の若者たちは互いに交流し合っていた。その原点を対談から学んだ。(文聖姫)

「経済私考」私考

 実を言うと、私は経済学部出身だ。でも大学時代はバイトとサークル活動に明け暮れ、ろくに勉強しなかった。だから、経済学部というのが恥ずかしいほど、経済の知識に乏しい。そんな私でも、いつも面白く読んでいるのが本誌の連載コラム「経済私考」だ。「私考」というだけあって、それぞれの筆者が個人の考えを存分に書いてくださるのだが、いつも首肯することばかりだ。ともすると数字や専門用語の羅列で敬遠されがちな経済の話を、読者目線に立ってわかりやすく解説してくれるのもいい。モニターの中にも、「経済私考」を「すばらしいコラム」と褒めてくださる方がいた。

 本誌は政治や社会問題ネタを扱うことが多い。だが、それに比べて経済の記事は少ない。そうした中、このコラムがあることで、毎週経済ネタが尽きないことに感謝する。

 今週号に掲載予定だった「青木理の温泉という悦楽」は来週号(9月22日号)に掲載します。楽しみに待っている方、しばしお待ちください。(文聖姫)

海洋放出

 韓国で開催された「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」などを取材するため、ソウルに着いたのは8月24日。この日はちょうど福島第一原発汚染水の海洋放出が開始された日だった。韓国ではこの問題への関心が非常に高い。初日は江原道江陵に住む親友に会うことにしていたので、韓国高速鉄道KTXに乗るため、仁川空港からソウル駅に向かった。駅に設置されたテレビでは海洋放出について報じ続けていた。

 日本産の水産物輸入を全面停止した中国とは異なり、韓国の尹錫悦政権は海洋放出を容認していて、共に民主党などの進歩系野党は反発している。韓国各地には、与党・国民の力による「韓米日首脳会談成功 危険は減り機会は増えます」という横断幕が掲げられている。逆に進歩党のある議員は「いっそのこと大統領を(海洋)放出したい」と書いた横断幕を掲げた。李在明・共に民主党代表は8月31日からハンストを開始した。海洋放出をめぐって、韓国では与野党の対立が深まっている。(文聖姫)

関東大震災

 今日は関東大震災が起きてから100年目にあたる。この日を前後して、毎年集会などが開催されているが、今年は100年という節目もあって、例年より多くのイベントが催されていると感じる。その一つ、東京・町田で開かれた講演会に行ってきた。本誌6月16日号でもインタビューが掲載されている新井勝紘さんが講演した。震災後に描かれた絵から読み取れる朝鮮人虐殺について、詳細に解説してくれた。本誌のインタビューを読んでいたから、どんな絵があって、どんな意味があるのかはある程度知ってはいたものの、実際に大きなスクリーンに映し出された絵を見るのとでは印象が違った。生々しさに圧倒された。

 今回特集で登場いただいた深沢潮さんの本にも、虐殺のシーンが登場する。しかも、朝鮮人に間違われた日本人女性が殺害される。福田村事件の犠牲者も朝鮮人に間違われた日本人だ。

 町田の講演会は立ち見も出るほどの盛況だった。この問題への関心が高まっている証しだと思った。(文聖姫)