編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

「不適切にもほどがある!」

 今季、楽しみにしているドラマは毎週金曜日にTBSで放送されている「不適切にもほどがある!」。昭和からタイムスリップしてきた男性が主人公だが、いまではめったに放送されない喫煙シーンがあったり、放送禁止用語が連発されたり……。さすが宮藤官九郎。現代社会への風刺が効いている。

 そして、朝の楽しみだったのがNHKの連続テレビ小説「ブギウギ」である。久しぶりに月~金は欠かさず見ていただけに、終わってしまうのが残念だ。「東京ブギウギ」などをヒットさせ、ブギの女王と呼ばれた歌手、笠置シヅ子がモデルだ。笠置シヅ子の名前はもちろん知っていたが、こんなに波瀾万丈な人生を送った人だというのは知らなかった。それを乗り越えていく姿に元気をもらった。趣里の演技も自然体で、歌も踊りもよかった。

 さて、4月からの「虎に翼」は女性初の弁護士、三淵嘉子さんがモデルだ。今号では彼女と原爆裁判の関係について、佐藤和雄さんが書いている。ご一読を。(文聖姫)

鈴木一さん

 俳優や作家など各界の人々を訪ねてインタビューするシリーズ「編集長が行く」も5回目となった。今回登場いただいた鈴木一さんは、札幌地域労組で長年労働組合運動を支援してきている人だ。インタビューは昨年12月3日(日曜日)、札幌で行なった。鈴木さんは毎週日曜日の午前中は教会で礼拝に出席するので、そちらにも同行した。御自身の母をはじめ、高齢者の送り迎えも買って出るような人柄だ。ベトナム人技能実習生の解雇問題に取り組んだ動機も「許せない。義憤を感じた」からだという。

 礼拝終了後は札幌地域労組の事務所へ。事務所に向かう車中で、また一緒に味噌ラーメンを食べながら、そして事務所で長時間話をうかがった。それでも時間が足りないと思った。この日に東京に戻らなければならなかったから、後ろ髪を引かれる思いで事務所を後にした。掲載できなかったエピソードもたくさんある。鈴木さんとはLINEでつながった。これからもいろいろとお話をうかがっていきたい。(文聖姫)

読者会に思う

 今号の「読者会から」欄でも報告されているが、2月25日に開催された北大阪読者会with youの定例会に、社長兼発行人の植村隆とともに参加してきた。阪急京都線茨木市駅のすぐ近くが会場だ。この日は8人のメンバーが参加した。私が参加するということで、前半はメンバーから寄せられた質問に私が答える形で進んだ。質問は事前に寄せられていたので、答えはあらかじめ作っていったが、私の答えに対してさらに質問がきたりして、活気ある議論が展開できた。後半はいつものように、参加者全員が直近の数冊で感じたことなどを語り合った。本来ならこちらに多くの時間を割くのだろうが、この日は私や発行人がしゃべり過ぎたため、少し時間が足りなかったかもしれない。

 読者会に参加するといつも感じることだが、みなさん、本当に本誌のことを真剣に考えてくださっている。時には厳しい言葉もあるが、元気づけられる。何より直接会って話すのがいい。「読者会から」欄を読むと、いろんな顔が浮かんでくる。(文聖姫)

女子サッカー北朝鮮戦観戦記

 2月28日に東京・代々木の国立競技場で行なわれたサッカーの試合を見に行った。パリ五輪女子サッカーアジア最終予選、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)対日本の第2戦だ。24日にサウジアラビアで行なわれた第1戦はドローだったので、この日の試合で勝った方が出場権を獲得できる。私は北朝鮮の応援席に座った。チームカラーの赤のTシャツやトレーナー、セーターを着た人たちとともに「イギョラ(勝て)!」と書かれたビニール製の応援棒を叩きながら、声援を送った。

 試合は2対1で日本が勝利したが、互角の戦いだった。贔屓目ではなく、北朝鮮の方が実力的には勝っていたと思う。チャンスを着実にものにした日本に勝利の女神が微笑んだ。いい試合を見させてくれた両チームの選手たちに拍手を送りたい。よかったのは、試合結果を伝えるニュースに北朝鮮チームにも好意的なコメントが多く寄せられていたことだ。スポーツは時に政治を動かす。冷え切った日朝関係の雪解けのきっかけになればうれしい。(文聖姫)

「日本語わかりますか」

 先々週末、ガザで医療支援を続ける医師の猫塚義夫さんにインタビューするため、札幌に行った際の話。ホテルでチェックインしようとしたら、パスポートを見せてほしいという。私は、特別永住者なのでパスポートは持ち歩いていないと言ったら、じゃあ在留カードを見せてくれ、と。で、特別永住者証明書を見せた。さらに、ホテルの設備を説明された時の“とどめの一言”。「日本語わかりますか」

 親切心かもしれないが、「ああ、またか」というある種、あきらめムードになった。こんな思いをするのは、子どもの頃から数えて何度目だろう。敗戦後から数えると、在日コリアンは80年近く存在し続けているのに、いまだに知らない人がいる。名前をみて、「中国人? 韓国人?」と聞いてくる人も。韓国人と答えると「日本語お上手ですね」。これも定番の反応だ。「私は在日コリアン2世で、日本で生まれ育ったから、むしろ日本語の方が得意なんです」という説明もこれまた定番。だから何だと言われれば、それまでなんだが。(文聖姫)