編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

倍賞千恵子さん

 7月6日に和歌山で開催された倍賞千恵子さんのコンサートを観ました。夫の小六禮次郎さんもピアノの演奏者として出演。倍賞さんの歌、お二人の軽妙なトークに魅入られ、1時間半があっという間に過ぎた感じです。特に「死んだ男の残したものは」(作詞・谷川俊太郎、作曲・武満徹)は圧巻でした。倍賞さんはコンサートでこの歌をよく歌います。本誌2023年1月6日・22年12月23日号掲載のインタビューでは、「『死んだ男の残したものは』を歌い続けることが、私の『戦争反対』という意思表示」と語っています。午前中には寅さんシリーズでお馴染みの山田洋次監督作品『家族』(1970年公開)を上映、山田監督、倍賞さん、北山雅康さんらの対談も盛り上がりました。

 コンサートを主催したのは「わかやま寅さん会」(西本三平代表)。本誌和歌山読者会の方々も複数いて、さらには倍賞さんと小六さんをインタビューした縁もあって観に行きましたが、はるばる和歌山まで行った甲斐がありました。(文聖姫)

選挙権

 今回ほど選挙権をほしいと思ったことはなかった。東京都知事選に1票を投じたかったからだ。私は日本で生まれた在日コリアン2・5世(父が1世、母が2世)だ。ハングルの読み書きはできるが日本語母語話者である。税金だってきちんと納めているし、生活がどん底の時でも社会保険料を滞納したことはなかった。そして日本生まれの日本育ち。にもかかわらず選挙権がないのだ。国政とまでは言わない。せめて、自分が住んでいる所のトップを決める地方自治体選挙に参加したいと思う。そうすれば今回の都知事選で、自分の思いを「投票」という形で表現できたのだから、その機会を最初から与えられないことは残念だ。

 連日の異常な猛暑のため、本誌7月5日号「きんようびのはらっぱで」に掲載した7月14日開催予定だった講演会「あの時、僕らは13歳だった」は無期延期すると、主催者から連絡がありました。91歳とご高齢の寒河江正氏の健康に配慮したためです。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。(文聖姫)

長生炭鉱

 山口県宇部市の東部、瀬戸内海に面した床波海岸にあった長生炭鉱は、別名「朝鮮炭鉱」と呼ばれていました。海底坑道の危険な炭鉱で、朝鮮人労働者の数がずば抜けて多かったためです。その長生炭鉱で大惨事が起きたのが1942年2月3日。午前6時頃、海岸の坑口から1000メートル以上沖の坑道で異常出水が始まり、午前8時頃水没したのです。水没事故のことを炭鉱用語で「水非常」と言います。この事故で183人が犠牲となり、うち136人が朝鮮人労働者でした。

「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」では現在、坑口を開けるための資金を集めるクラウドファンディングを実施しています。締切は7月13日。詳しくはホームページ(https://www.chouseitankou.com/)をご覧下さい。

 旧知の先輩で同会会員の金静媛さんは、「日本の朝鮮植民地清算が未だなされていないことの象徴。犠牲者には現在の朝鮮民主主義人民共和国出身者もおり、一日も早い日朝国交正常化が望まれる」と話しています。(文聖姫)