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除染土の行き先

 東日本大震災の発災後、同じ年に生まれた甥っ子がこの4月で中学3年生になる。東京にも放射能が降り注いでいるという情報に、妹は生まれたばかりの息子と実家の母の3人で関西に脱出した。そのくらい切迫した状況だった。

 それなのに今や原発事故などなかったかのようなきらびやかな政治のふるまい。2月25日の報道では、空間放射線量を下げるために福島県各地で表土をはぎ取り、現在大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設で保管されている除染土について、伊澤史朗・双葉町長が個人的な考えとしながらもまずは「町内で利用」する意向を示したという。

 背景には東京・新宿御苑などでの除染土の再生利用の実証事業計画に住民の反対があり、法律で定める県外処理のめどが立たない状況がある。多くの福島の人たちは自分たちが望んだわけではないのに首都圏に電力を送るために原発を押しつけられ、事故によって故郷を壊され、挙げ句の果てに除染土の処理まで強いられている。あんまりではないか。(吉田亮子)


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