「北朝鮮ミサイル騒動」の陰に隠された二つの事実
2009年4月10日9:00AM|カテゴリー:一筆不乱|北村 肇
まだエイプリールフールが続いていたのかなと思わせる、まっこと鼻白む茶番だった。はなから日本領土に打ち込まれる可能性はなく、落下物の危険性も交通事故に遭うより低いことがわかっていながら、ものものしい戦時体制を敷き「国家の危機」を演出した政府。NHKを筆頭に、それをほとんど無批判に報じ続けたマスコミ。
だが、「北朝鮮ミサイル騒動」を単に茶番と片付けるわけにはいかない。国をあげての猿芝居の陰には、重要な事実が隠されているからだ。
一つは、市民の危機意識をあおり利益を得る連中のいること。わかりやすいのは「麻生首相の点数稼ぎ」だ。為政者は、危機的状況、しかもそこに「戦争」のにおいがあるほど人気を高めやすい。まして相手は「拉致の国」。小泉純一郎氏や安倍晋三氏が支持率を高めるきっかけになった北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)バッシングは、麻生首相にとって切り札である。
外務省や防衛省も千載一遇の機会ととらえたのだろう。何しろ米国の圧力で1兆円もかけて構築したMDシステムだ。宝の持ち腐れになったら、いずれは市民・国民から批判を受けるのは避けられない。それが今回の騒ぎで市民権をえられるとなれば、まさに棚からぼたもちみたいなものだ。また、最後に笑うのが米国なのは言うまでもない。MDに実効性のないことは明らかで、北朝鮮脅威論をきっかけに日本へ横流しできれば、「在庫一掃」ができるかもしれないのだから。
さらには、もっともほくそ笑んでいたのは北朝鮮かもしれない。そもそも、今回の打ち上げには、「米国との交渉を有利に運ぶ」、「国内の引き締め」という二つの目的があったと思われる。この観点からすれば、日朝の緊張関係は望むところだ。日本が迎撃用ミサイルの配備という愚を犯すと、北朝鮮は直ちに「軍事的行動も含め反撃する」といった内容の声明を出した。同国にしてみれば、思う壺だったのだろう。
隠蔽された二つめの事実は、宇宙開発とはすなわち「世界支配のための戦略」という実態である。ロケットとミサイルが実は同一のものであることが、はしなくも浮き彫りになった。仮に弾頭には衛星がついていたとしても、米国にとって重要なのは、北朝鮮のロケット技術が発展しつつあるというその一点だった。大陸、海洋、宇宙空間、すべてをわがものにしたい米国が恐れているのは、大陸間弾道弾だけではなく、他国による宇宙への進出そのものなのだ。(北村肇)