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東京都議選で一票を投じるべきは、真に強い「やさしい人」

「歴女」が増えているらしい。テレビの大河ドラマに登場する、直江兼続や前田慶次といった戦国武将の”追っかけ”というところか。草食系男子にあきたらない女性が、強い男に憧れる――そんな解釈もあるが、はたしてどうだろう。演じる男優を見る限り、いわゆるマッチョ系はいない。鎧も重そうな優男ばかりだ。

 女性誌の男性タレントランキングも、キムタクを筆頭にジャニーズ系が上位を占めるようになって久しい。「男っぽい」や「男くさい」が人気を得る時代は当面、きそうにない。憧れの対象は、兼続ではなく、およそ異なるタイプを演じるけなげな妻夫木聡であり、むしろその弱々しさが受けているのではないか。

 東京都議選が告示された。与党は相変わらず、“300万知事”でマッチョな石原慎太郎氏の人気をあてこんでいるらしい。だが、もはや神通力は失せている。本誌今週号で特集したように、新銀行東京ではミソをつけ、五輪招致は「あおれども都民は盛り上がらず」が実態。特に後者は、都市開発が真の目的という疑惑がふくらんでいる。何のことはない、一部のゼネコンと、企画を立てる電通に利益が流れ込むだけという構図だ。一方で、警備も含め莫大な経費は税金にはねかえり、都民には損失となる。

 石原氏の「男らしさ」という化けの皮もすっかり剥がれている。単に女性蔑視を“売り”にする差別的人間にしか見えない。「ババア発言」問題で多少、反省したかと思ったら、とんでもなかった。広報東京都臨時号に掲載された、IOC評価委員会、ナワル・ムータワキル委員長の写真に関し、またまた暴言を吐いたという。

 発言をそのまま記せば、「よほど若くて超美人ならわかるけど、あの人、元美人ではあるけどね、あれ見て、だれが、これはだれだかわからないんだよ」。まさに唖然とするばかり。

 いきがった強さや、男尊女卑の父性主義は底割れしている。肉食系にありがちな、弱さを隠すための強面ぶりにだまされる都民は、もはや多くない。いまの時代にもとめられるのは「やさしさ」である。むろん、それはおとなしいとか臆病とかではない。「自分の痛みより他者の痛みに敏感」な人を、私は「やさしい」と感じる。石原知事は過去の人なのだ。
 
 では、「強い」人とはどんな人か。性別に関係なく、「やさしさ」を行動に移す人だ。真に「強い」人にこそ、都議になって欲しい。ほとんど口の端にも上らなくなった「強きをくじき弱きを助ける」が、投票先を決める一つの指針である。(北村肇)