「対等な日米関係を目指す」と言う鳩山さん、どうかぶれないように
2009年9月25日9:00AM|カテゴリー:一筆不乱|北村 肇
困ったもんだ。子会社の「日本」でクーデターが起き、経営陣が総代わりになった。これまで、われわれ親会社「米国」の利益を最優先しろと命じ、うまくいってきたのだが、少しやりすぎたようだ。それにしても、ここまで社員の不満がこうじているとはしらなかった。人望のない社長が続いたことが原因かもしれないな。
次期社長は心配だ。親会社から自立するとか、ライバル企業集団の「アジア」と関係を深めるとか、従来の経営陣とは発想が違うようにみえる。もっとも、役員の中にはわれわれの息のかかった連中もいることだし、新社長だって最後は親会社に反旗を翻すことなどできっこない。まあ、とりあえずお手並み拝見か――。
米国の本音はこんなことではないかと想像してみた。09年の年次改革要求書をみただけでも、本質は外れていないと確信する。相も変わらず自分たちに利益となる要求を日本に突きつけている。4年前の総選挙で争点になった郵政民営化も、実は米国の要求だったことはすでに明らか。親会社・米国と子会社・日本の関係は延々と続いているのだ。
そこに起きた政権交代。鳩山由紀夫首相の論文「日本の新たな道」がにわかに注目を集めた。月刊誌に発表されたものの要約がヘラルド・トリビューンの電子版などに載り、米国を刺激した。骨子は(1)自由市場経済が経済危機をもたらした(2)東アジア共同体の創設を目指す(3)ドル基軸通貨体制の見直し、アジア共通通貨の実現――など。一国覇権の座にしがみつきたい米国にしてみれば、「子会社の社長が何を偉そうに」となるのだろう。
だが、いずれも極めて真っ当な主張だ。以下のような論文の一節を読むと、鳩山氏は歴代の自民党総裁より的確に現状分析をしていると評価したくなる。
「マルクス主義とグローバリズムという、良くも悪くも、超国家的な政治経済理念が頓挫したいま、再びナショナリズムが諸国家の政策決定を大きく左右する時代となった。数年前の中国の反日暴動に象徴されるように、インターネットの普及は、ナショナリズムとポピュリズムの結合を加速し、時として制御不能の政治的混乱を引き起こしかねない。……われわれは、新たな国際協力の枠組みの構築をめざすなかで、各国の過剰なナショナリズムを克服し、経済協力と安全保障のルールを創り上げていく道を進むべきであろう」。
そもそも「国家同士が言いたいことを言い合う」のは当たり前で、それこそ米国が常に強調する民主主義というものだ。あとは、鳩山氏がぶれなければいいのだが。(北村肇)