福島第一原子力発電所の事故を見ていて、炭鉱が閉山していった歴史が脳裏に浮かんだ
2011年4月29日9:00AM|カテゴリー:編集長後記|平井 康嗣
編集長後記
今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故を見ていて、炭鉱が閉山していった歴史が脳裏に浮かんだ。
国内で最後まで営業生産していた炭鉱は北海道釧路市の太平洋炭砿。その前は長崎県池島町の池島炭鉱だ。私は炭鉱の閉山を見届けたくてたまらず、長崎に行って池島を連日うろつき、炭鉱労働者たちに話を聞き、写真を撮った。
なぜ炭鉱が止まったか。表向きは、炭鉱事故で死者が出過ぎたからだ。死者が出るような危険な職場を現代日本は放置しておくことはできない――。だが、ここには国家と財界の冷徹な論理が存在していたはずだ。石炭は火力発電に使用される。石炭を止めれば電力は激減する。だから炭鉱閉山の前提として、海外からの石炭入手の確保と、代替エネルギーの安定供給が必須だ。そうして炭鉱事故のリスクは発展途上国に押しつけられ(今もそうだ)、原子力のリスクは正面から引き受けた。
これを考えれば、原子力の代替が火力でもないことは当然だ。電力も腹八分目でいいじゃないか。 (平井康嗣)