原発事故が大公害を引き起こすとは知っていたが、二〇一一年に事故を起こすとは予測してはいなかった
2011年9月2日9:00AM|カテゴリー:編集長後記|平井 康嗣
原発事故が大公害を引き起こすとは知っていたが、二〇一一年に事故を起こすとは予測してはいなかった。ただエビデンス(証拠)型であり予測に弱い科学の限界は自分なりに感じていた。だから高いリスクを抱えたままの原発は廃止すべきと考えていた。
科学技術についてそう考えたのは世界金融危機の二〇〇八年が契機だ。この時、数学や金融技術工学の秀才が作り上げてきた仕組みが虚構だと暴露された。彼らはマズい科学者の例に漏れず、過去の成功例をかき集め、自分と他者を洗脳することに腐心して、リスクを軽視した。そうして世界中に毒債権をばらまき、自ら破綻していった。
歴史主義を批判する哲学者カール・ポパーの言葉通りだった。その後、世界はリスクについて考えをあらためると私は楽観していたが、そうではなかった。リスクについて学習することを人は嫌う。
ただ今回の原発事故後、リスクと向き合ってきた科学者たちの存在が広く知られた。市民科学者とも呼ばれている人たちである。
(平井康嗣)