本誌ルポ大賞で重装備精神病棟を題材にした作品が佳作に選ばれた
2012年9月28日9:00AM|カテゴリー:編集長後記|平井 康嗣
本誌ルポ大賞で重装備精神病棟を題材にした作品が佳作に選ばれた。
私も六、七年前、病棟に入ったことがある。
編集部にはいろんな電話がかかってくる。
ある日、電話をとると、英会話学校の営業だった。
切ろうとしたが、私の仕事を話すと興味を持たれ、会うことになった。
そうしてバングラディシュ人のアンディ(仮名)と出会った。
彼はもともと中古車輸出の会社経営者だったが、微罪で警察に捕まり職を失った。
反抗的だったため施設で暴行を受け薬も打たれたという。
そこで事件の調査を始めたが、しばらくすると病院にいると連絡が来た。
酒を飲むと自失し、女性に抱きつき、住居侵入もし、警察沙汰になっていた。
薬で精神を蝕まれたようだった。
病院は小平の閉鎖病棟。厳重な扉の向こうは異空間だった。
彼は「おれはこのひとたちとちがう。にもつあずかって」と頼んできたが、私は「そこまで付き合いきれないよ」と見捨てた。
その後、一度だけ電話があり、今は消息不明だ。私はどうしたらよかったのだろう。 (平井康嗣)