編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

今週号では、さまざまな筆者が橋下徹大阪市長の「従軍慰安婦」発言について批判を展開している。

編集長後記

 今週号では、予想通り、さまざまな筆者が橋下徹大阪市長の「従軍慰安婦」発言について批判を展開している。懸念すべきは橋下氏が必死に論点をすり替えることによって、この論争が後退しかけていることだ。

 軍隊に売春はつきものだとか卑怯者の石原慎太郎氏がまたぞろ発言していたが、繰り返すが、強制された「慰安婦」がいるのは通説だ。日本軍はインドネシアでオランダ人捕虜に数週間売春させていた。戦後裁判では中国やベトナム、インドネシア、東ティモールでも日本軍が現地の女性に「慰安婦」を強制したことを示す証拠が提出されている(二〇一二年九月一四日号西野瑠美子論文参照)。

 戦争に「慰安婦」は必要だったと語ることは、レイプや売春の強制が戦争には必要だったと歴史的に認めることに等しい。これは政治家がドヤ顔で言うことだろうか。殺人や暴力を前提とする軍隊を肯定するほどに、守るべき人権のハードルが大きく引き下げられる。リーダーたる政治家には“本音”より理想を語る姿を見せてほしい。 (平井康嗣)