卒業式に大事なのは「日の丸・君が代」ですか、心を通わせ巣立つことですか
2008年3月14日9:00AM|カテゴリー:一筆不乱|北村 肇
何気なく窓外に目をやり、そこに春の昼下がりを見たとき、意外に社会は穏やかだと思ったりする。行き交う人のまなざしは厳しくなく、足取りはそれなりに軽やかでもあり。でも、一歩、外に出たら、他人のことなど眼中になく突き飛ばす勢いで突進する人々に出会う。その現実はわかっているが、窓外に見る「幻影」も楽しみたい。
ここまで考え、本当に幻影に過ぎないのか、改めて思いめぐらす。「イライラ、ギスギス」の好きな人はいないはずだ。穏やかな空間を毛嫌いする人もいないだろう。だったら、他人はすべて敵といった風情でのし歩くほうが、そもそも非現実ではないのか。猜疑より信頼に満ちた社会のほうが幸せに決まっている。
まずは教育に携わる人から目覚めてほしい。命令に従わないからと、一部の教員を排除することが、いかに子どもたちを、ひいては社会を蝕むか、深刻に反省してほしい。
この欄でも何度か触れた根津公子さんが、今年の卒業式に不起立を貫くことで免職になる可能性が強い。これまで9回、学校行事で「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱に不起立で臨んできた。
「信念は曲げられません。私の信念は『自分で考え、違うと思うことには違うと声を出す』ことです。生徒にそれを言い続けてきた私が立つわけにはいかないんです」(本誌今週号より)。
根津さんの決意は固い。
さらに、根津さんの働く南大沢学園養護学校(東京都八王子市)の尾崎祐三校長が、根津さんのトレーナー着用が「職務命令違反」だと都教委に報告していることがわかった。「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」(「日の丸・君が代」に反対)のロゴが入っていたとの理由だ。できれば卒業式前に免職にしたいという、都教委の思惑が透けてみえる。
だれが見てもバカバカしいことを、教育者が平然とやってのける。これが東京都の教育行政の実態だ。現場のすべての先生方に訴えたい。本当に「日の丸・君が代」が大事なのか、暖かな雰囲気のもと仲間や教師と心を通わせ巣立つことのほうが大切なのか。素直に静かに、自分に問いかけてください……。(北村肇)