路上、路地、路傍――。
2014年2月28日7:00AM|カテゴリー:編集長後記|平井 康嗣
編集長後記
路上、路地、路傍――。
路にこそ本物の言葉は転がっているのだろうか。
故・榊獏山に『路傍の書』という本がある。たとえば路の傍らにたたずむ馬頭観音の石碑に刻まれた無名の書家の渾身の一筆に名筆にはない美を見いだした。獏山が路で立ち止まり歩み寄って破顔する姿が目に浮かぶようだ。
『夜露死苦現代詩』などで知られる都築響一は、現代の路傍=ロードサイドや、不良や認知症の老人の言葉に唯一無比の詩を見いだしている。
プロテストソングの実体は詩だ。それはかならずしも社会や権力に歯向かう言葉だけではないだろう。家族や学校や東京などへの想いを、俺や私が自分の頭で考えて正面から受け止めようとして出た言葉と音なのである。岡村靖幸のアルバムも推薦したのだが、選にもれて残念である。岡村の突き抜けた「気持ち悪い格好いい」に、表現する勇気をもらった人も多いはずだ。
安全圏のイデオロギー的言説に流されず、無名の声、声にならない声に共振していきたいものだ。 (平井康嗣)