編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

市場経済をもつ民主制国家の役割はやはり再分配だろう

編集長後記

 外交と安保が国家の役割だと言われるが、市場経済をもつ民主制国家の役割はやはり再分配だろう。古代ギリシアでも貨幣経済は当然に経済的不平等を生んだ。その少数富裕層と多数の貧困者による争いの構図は、現代まで延々と続いている。富裕層がもっとも恐れるのは多数派の貧困者が再分配の声を上げることだ。
 
『自発的隷従論』を読んだ流れで手に取った安冨歩さんの『ジャパン・イズ・バック 安倍政権にみる近代日本「立場主義」の矛盾』(明石書店)には、官僚や大企業中心の自民党に対抗軸を立てたのは「田中(角栄)主義」で、それは対米一辺倒からの脱却、公共事業、福祉重視と整理されている。田中主義は地方や都市部非体制派への再分配だった。マシーンにもなった。

 しかし、自民党は逆戻りしえた。貧困と孤独がこれだけ広がっているのに、だ。貧困者が平等に持ちえるのは国籍や愛国心だけなのか。それは錯覚だ。目くらましだ。経済的な平等こそ政治に求めるものだという視点を強く持ち直したい。 (平井康嗣)