「慰安婦」と原発事故の報道を見ていると、共通点がいくつも見つかる
2014年10月10日7:00AM|カテゴリー:編集長後記|平井 康嗣
編集長後記
いまの「慰安婦」と原発事故の報道を見ていると、共通点がいくつも見つかる。
両者とも理解するには相応の勉強が必要になるということだ。事実関係は当然、医学、地震学、関係史や関連法など。データへの基本的姿勢も必要だ。研究者ですら専門をさらに狭い領域に絞って四苦八苦しているテーマを私たちは相当乱暴に扱っている。
両者とも、とても大事だが商業的(娯楽的)ではなく、メディアはほぼ無視してきた「暗い」テーマだ。しかし「暗い」ものはたいてい日本の潜在的なリスクであり、この雑誌の短かい歴史を振り返っても、いずれ社会問題として吹き出してきたものばかりだ。
当事者の声を無視してきた結果、いざ報じるときに、膨大な確認作業という利子がつく。それでも記者は報じるため、断片的で都合のいい現在の事実ばかりを取材する。死人に口なし。いや、むしろ当事者に話を聞かないほうが都合はいいのだ。そうして当事者の声を聞けば一発でわかる「本質」にはなかなかたどりつけない。 (平井康嗣)