編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

「ピースとハイライト」が紅白で歌われたときには唸った。

編集長後記

 サザンオールスターズの「ピースとハイライト」が紅白で歌われたときには唸った。歌は、詩、曲、歌い手の感情などが駆使されることでメッセージがとても理解されやすい。ところが年が明け、サザンの所属事務所には抗議が行き、サザンはお詫びを出した。

 一方、ライブと違って文章を「読む」ことは難しい。この場合の「読む」とは「わかる」ということだ。小林秀雄が代表作『本居宣長』を書いた理由の一つは、だれも本居を読めていなかったことだ。本居が魂を込めた作品には向き合わず、本居人物研究をしても「わからない」のである。

 しかし己の「わかる」を信じたい不安な人はどうするか。徒党を組むのである。自分の信じたい歴史を押しつける人たちもそうだ。小林は講演で、「なぜ徒党を組むのか」というテーマで次のように語った。自分流に信じることは自分で責任をとること。しかし自分流に信じられない人は匿名のイデオロギーや無責任な集団をつくる。そして集団になると私たちに「悪魔」が現われる、と。 (平井康嗣)