直接知と間接知
2016年8月19日7:00AM|カテゴリー:編集長後記|admin
8月15日の「終戦記念日」は、編集部近くにある地下鉄九段下駅が人でごったがえす。靖国神社と千鳥ヶ淵戦没者墓苑があり、参拝者が訪れるからだ。私は全戦没者を慰霊追悼する千鳥ヶ淵にお参りすることにしている。ただし沖縄での正式な終戦が9月7日であることを本土の人間は忘れてはいけない。
さてこの時期になると〈戦争の記憶を語り継ぐ〉という企画が目につく。語り継ぐ意図は、二度と戦争を起こさないため、平時を維持するため、憲法9条2項を護るためというところだろう。しかし経験者の知識を他者が正しく理解することは困難だ。知識の分類方法の一つに経験による知識=「直接知」と記述による知識=「間接知」という分け方があるが、大戦の記憶は私にも間接知だ。
言葉は曖昧で両者の質の違いは大きい。そのため自衛隊を軍隊にしたい連中は直接知の不在を攻撃し、間接知の修正も図る。しかし反戦が戦後国際社会の圧倒的な直接知だったという歴史は、憲法9条の意義を不動のものにしたのだと考えている。