新しい「テロ特措法」も、米国に対する「思いやり」法にすぎない
2007年10月19日9:00AM|カテゴリー:一筆不乱|北村 肇
「平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」。これが、いわゆる「テロ特措法」の正式名称だ。百字以上ある。
曖昧で、わかりにくく、長ったらしい。本質を隠蔽する時に省庁が使う常套手段だ。「テロ特措法」の素顔を知られないために、”優秀”な官僚があれこれと知恵を絞ってつくったのだろう。「人道的措置」の実態が米国に対する「思いやり」法であることを誤魔化す。彼らにしてみれば”成功”事例の一つだ。
だが、天網恢々疎にして漏らさず。同法のウソが次々と暴かれ、参議院で多数派を占めた野党がそれを追及する。あわてた与党は、新法づくりに奔走せざるをえなくなった。
何しろ、滅茶苦茶だ。イラク戦争開戦1ヶ月前の2003年2月、インド洋で海上自衛隊の補給艦「ときわ」が米国の補給艦「ペコス」に給油。この燃料が、米空母「キティホーク」に補給された。同空母はその後、ペルシャ湾で活動したのだから、日本の給油活動が米国のイラク攻撃に「寄与」したのは間違いない。
ところが、当時、官房長官だった福田康夫首相は、「海自補給艦からの給油量は、空母が1日で消費する20万ガロンにすぎない」として、イラク攻撃とは無関係であることを強調。それが最近になり、防衛省は給油量を80万ガロンに訂正、さらにその後、67万5千ガロンに下方修正した。
このことを国会で追及された福田首相は、「多少の齟齬はあったかもしれない」「私が創作したわけではない」「本当であれば撤回しなければいけない」としだいに追い込まれ、最後は「間違えていたと明確に申し上げる」と頭を下げるしかなかった。
その翌日、今度は米イージス艦に直接、給油していた事実を、石破茂防衛相が認めた。一体、どこまで国会や市民・国民を愚弄していたのか。
さて、新法の行方はどうなることか。いずれにしても、実態が米国属国法であることに、変わりはない。生活保護も受けられず、「おにぎりが食いたい」といって死んでいく国民そっちのけで、日本はいつまで下駄の雪を続けるのか。(北村肇)