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福田政権誕生で、まだまだ続く寝苦しい夜

 秋の日射しは、いつからこんなに厳しくなったのだろう。日射しそのものの問題ではなく、包み込む柔らかな風が消えたのか。9月に入っても、真夏を思わせる炎天に襲われることは過去にもあった。だが、どこかに、肌に伝わってくる心地よさが隠れていて、それに気づくのもまた、ささやかな楽しみだった。

 温暖化の進行は疑いようがない。ただ、私にはどうしても、人間があるものを失いつつあり、そのことが、「自然」の受け止め方を変えてしまっている気がしてならない。「あるもの」、それは「やさしさ」である。管理、監視、強制の社会がもたらす、「自分以外は敵」の風潮。この雰囲気が、秋風の心地よさをも消す。

 何かと、「ぶっ壊し」たがった小泉純一郎前首相、居丈高がリーダーの資質と勘違いしているらしい石原慎太郎都知事、右派陣営期待の星、安倍晋三首相。とげとげしい熱光線が日本を覆い続けた。新自由主義はすさまじい格差社会を生み、持てる者と持たざる者の落差は露骨に顕在化、教育基本法改悪、憲法の安楽死で「戦争の出来る国」が絵空事ではなくなった――。

 参院選の自民党惨敗の理由は、単に年金や「政治とカネ」の問題だけではない。ギラギラした、無遠慮で不作法な炎暑の季節に、ほとほと嫌気のさした市民・国民が多数を占めたのである。

 今にも「欲しがりません、勝つまでは」と口走りそうだった安倍首相は、さすがに「民意」の前に挫折し、すべてを投げ捨て逃走した。その後釜には、これまた暑苦しい麻生太郎氏が座ると見られていた。だが、事態は急変。あっという間に「主役」の座についた福田康夫氏は、熱暑の夏は終わりですといった風情を漂わす。

 だが、同氏は、批判されると激しく憤る性格と伝えられる。本誌でも報道した通り、暴言も数多い。「いかにも偉そうで鼻持ちならない」と批判する永田町関係者もいる。「弱者」への想像力を持ち合わせているようには、とても見えない。私には、「自分が一番」「自分が正しい」と信じて疑わない政治エリートにしか思えない。
 
 リーダーに必要な資質は、ふくよかなやさしさである。その上で、市民・国民にもっとも役立つ政策を毅然と打ち立ててこそ、真の首相と言える。小泉氏や安倍氏と同様、福田氏に、そうした安心感は抱けない。寝苦しい夜はまだまだ続く。 (北村肇)