安倍さん、支持率低下にはそれなりの理由があるのです
2007年7月13日9:00AM|カテゴリー:一筆不乱|北村 肇
誰が最初に気づいたか、「美しい国(うつくしいくに)」は逆さから読むと、「憎いし苦痛(にくいしくつう)」になる。圧倒的支持率のもと、「美しい国」を掲げ颯爽と登場した安倍晋三首相は、ここまでの人気急落を、およそ想像しなかっただろう。メディアの調査結果通りになれば、参院選で自民党は大敗する。首相はさぞかし世論調査を憎み、苦痛にあえいでいるに違いない。
だが、そもそも高い支持率がおかしいのだ。何と言ったって、言説に矛盾がありすぎる。「戦後レジームからの脱却」からして滅茶苦茶だ。安倍首相は「脱却」最大のポイントとして「憲法改正」を打ち出した。しかし、「日米同盟」の解消もあわせて主張しなければ筋が通らない。
だれが考えても、戦後日本は、「平和主義」「基本的人権」「主権在民」を謳った新憲法から再出発した。と同時に、評価はさておき、日米安保条約を基軸としてきたのも否定しようのない事実だ。日米安保こそ「戦後レジーム」そのものなのである。ここをどう説明するのか、ぜひ首相に聞いてみたい。
お得意の「押しつけ憲法」論も、きちんと主語を言ったらどうか。「米国に押しつけられた憲法」と。そのうえで「だから変える」とブッシュ大統領に宣言したらいい。もし「そんなことをしたら日米関係にひびが入る」と考えているのなら、最初から「戦後レジームからの脱却」などと叫ばないことだ。
安倍首相は、「右派」の人々にとっては輝ける星だ。戦前のような国家主義的日本に回帰し、アジアの盟主たる大国を目指す姿勢が受けるのだろう。「戦後レジームからの脱却」がそれを指すのなら、日本は名実ともに自主独立国家になる必要がある。つまりは、米国への従属から脱却しなくてはならないのだ。
だが、安倍政権は、米軍再編成に惜しみなく税金をつぎ込み、自衛隊を米軍指揮下に差し出している。どうみたって属国化路線をひた走っているのである。
かような言動の矛盾は、宰相として根っこがないからだろう。だから、閣僚の不祥事にしても、「消えた年金」にしても、問題が起きるたびにばたばたする姿が目立つ。まことに遺憾ながら、リーダーとしての資質に欠ける首相を私たちは戴いているのである。これで有権者の支持を得られたら、それこそ真夏の悪夢だ。 (北村肇)