4・3
2022年6月10日7:00AM|カテゴリー:編集長後記|文聖姫
2019年夏、両親の故郷、済州島を生まれて初めて訪れ、父のいとこたちに会った。私にとっては従伯父、従伯母にあたる。ある従伯父の家を訪ねた時のこと。家族の近況などを話していたら突然済州4・3事件について語り始めた。幼かった従伯父を守って母親が撃ち殺されたこと、丘の上にたくさんの死体が積まれていたこと。とっさのことで録音機も用意していなかったから、話を記録できなかったのが残念だ。「来年の夏に再訪してじっくり話を聞こう」と思ったのだが、コロナでかなわない状況が続く。
いつか父の家族のことを本にしたいと思っている。それには従伯父の話は欠かせない。「4・3」を体験した親戚がどんどん鬼籍に入り、彼も高齢だ。気持ちは焦る。
そんなことを考えたのも、ヤン ヨンヒ監督の『スープとイデオロギー』を観たからだ。「4・3」を体験した母を記録したドキュメンタリー。今号ではヤン監督と俳優のキム ヘリョンさんについて中村富美子さんがルポした。(文聖姫)