渋谷敦志さん
2025年1月24日7:00AM|カテゴリー:編集長後記|admin
畑仕事をする笑顔の女性、真剣な表情の祭りの男性、強風で傾きながら崖に立つアテの木。能登半島地震から1年を機に出版された渋谷敦志さんの写真集『能登を、結ぶ。』のページをめくると、悲惨な写真ばかりではないのに感情が揺さぶられる。それは渋谷さんが見た「その地域の限界とは裏腹の、まだ力を出し切っていない可能性」(あとがき)を感じるからだろうか。
渋谷さんは地震翌日の昨年1月2日、日本赤十字社の医療活動の取材で能登半島に入った。その後、峠で巨岩のすき間を自転車で突入していく人に出会う。「大好きな人たちがいるから」とその先に物資を届けようとしていた。その姿に心をつかまれ、取材を続けることができたという。
しかし、写真集を持って再訪したら「さまざまな問題が現実味を帯びてきていた。能登はこれからどうするかという段階にきている」。道路は通っているので、ぜひ現地を訪ねてほしいとも。渋谷さんの願いは、「一人でも多くの人と能登を結ぶ」ことだ。(吉田亮子)