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鄭義信さん

▼3月14日号「歓喜へのフーガ」で崔善愛編集委員がインタビューした鄭義信さん作・演出の東京演劇アンサンブル『白い輪、あるいは祈り』(『コーカサスの白墨の輪』ベルトルト・ブレヒトより)を東京・俳優座劇場で観た。

 稽古での鄭さんは役者に駆け寄り、じっと見つめて考えたり、ニコニコと話し合ったりしながら、次々とプランを提示する。大きな声も出さずに、ときどき笑いまで起きる現場……。あたりまえだが、見事に一つにまとめていた。

 舞台は鄭さんが言うように「大岡裁き」が軸ではあったが、取り合ったのは戦乱の中で実際の母親に置き去りにされた子ども。そして育ての母親には、子どもを抱えながら生き延びるために、裁判に至るまでに数々のできごとが。

 鄭さんは「きな臭い空気に覆われはじめている」今の時代にあって、「あまりに能天気」だと結末を変更した。そんなラストとも重なり、イスラエルによる攻撃が再開されたガザの人々、実際の戦争を思わずにはいられなかった。(吉田亮子)


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