妄言を繰り返す安倍晋三氏。この人は一体、何に酔っているのだろう
2005年1月21日9:00AM|カテゴリー:一筆不乱|北村 肇
久々に風邪をひいた。せき、関節の痛みなどはたまらないが、適度に酔ったときのような、脱力感とともに自分の中にすうっと墜落していく気分は、不思議と心地良かったりする。一種の陶酔感だろうか。考えてみると、自己陶酔は熱病のようなものかもしれない。ときとして日常から遊離するのも人間の知恵か。
だが自己陶酔が日常化したら、それは別の病いを疑わざるをえない。やたらに「感動」したり、都合が悪くなるたびに「何で私の言うことが理解できないのか」と、ますます居丈高に開き直る、どこぞの総理に不安を感じていたら、上には上がいるものだ。
あなたは関東軍の末裔かと、その時代錯誤な右翼的言動にあきれることの多かった自民党前幹事長の安倍晋三氏が、またまた妄言を吐いた。戦犯法廷に関するNHKのテレビ番組に圧力をかけたとの報道を否定した上で、「NHKだから公平公正にきちんとやってくださいねと言った」と胸を張って語ったのだ。
民放と違い、事実上、予算を永田町に握られているNHKにとって、自民党有力者の発言は極めて大きな意味をもつ。仮に「きちんとやってくださいね」という穏やかな表現だったとしても、NHK側が「この番組はまずい」という意味に受け止めるのは必然だろう。安倍氏は「検閲でも強制でもない」と主張するのだろうが、普通、こうしたことを「圧力」というのだ。政治家たる者、口にしてはいけないことなのだ。
本誌で安倍氏にかかわる霊園疑惑を特集した際、担当記者が事務所を通じてコメントを求めたところ拒否された。信じられない思いだった。新聞記者時代も含め、多くの自民党議員に疑惑やスキャンダルに関する取材をしてきたが、頭から拒否された記憶はない。何らかの回答はあった。特に、大物と目される議員ほど、中身はともかく対応はていねいだった。
中国や北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に関する勇ましい発言のたびに、安倍氏には「問答無用」といった青年将校の雰囲気が強まっていく。懐の深さが微塵も感じられない。この人は一体、何に酔っているのだろう。それとも悪性のウイルスに心を蝕まれ、「情愛」や「やさしさ」を見失ってしまったのか。(北村肇)