【タグ】「別姓訴訟」と家族法
今国会で改正実現なるか 民法改正を求める400人が結集
宮本有紀|2010年3月12日12:00AM
選択的夫婦別姓や婚外子差別の撤廃を盛り込んだ民法改正法案が初めて政府提出法案に盛り込まれ、改正実現の気運が高まるが、反対派の巻き返しも見られる。そんな中、「民法改正を求める!3・3決起集会」(主催・同実行委員会)が三日、東京・憲政記念館で開かれ、全国から約四〇〇人が参加した。
棚村政行早稲田大学教授が「現在、世界でほとんど日本だけが夫婦同姓を強制しているが、改正案は同姓でも別姓でもどうぞ、という提案。婚外子差別は、下級審で憲法一四条違反の判決もでている。出生による差別はいけない。それぞれの生き方を尊重することは多くの人の幸福につながる」などと改正案について解説。一九九六年の法制審答申時に内閣法制局長官だった大森政輔氏は「氏を同じくすることが婚姻の必須の事柄と思わない。与党の中も意見がわれているので、党議拘束をはずした採決で早期実現を」などと挨拶した。
一〇日に日弁連会長選挙の再投票を控えた両候補も出席。宇都宮健児氏は「日弁連の人権活動のなかでも一番大きな問題として取り組む。憲法の理念に沿った改正だと思う」、山本剛嗣氏は「男女差別という視点だけでなく女性一人ひとりの能力を発揮できる社会にするための改正で、それは社会の発展につながる」などと述べた。
与党からは小宮山洋子議員(民主)が「議員になった目的の一つが民法改正。法案の優先順位をあげるために皆様のお力を」、近藤正道議員(社民)が「人権大国として胸を張っていくためにも今国会で改正を」と意気込みを見せ、野党側も浜四津敏子議員(公明)が「多様な生き方ができる社会が本当に豊かな社会。法務大臣を全力で後押しする」、仁比聡平議員(共産)が「多くの場合、女性の側に精神的苦痛と不利益がある。これが法律婚を躊躇する原因になっている」などと賛同の意を表明。
また、弁護士の久保利英明氏が「自己決定権がないこの国は民主国家ではない。別姓がだめなら、仮に亀井静香という人がいて、荒川静香という人と結婚したらどうするんですか」、評論家の樋口恵子氏が「企業の吸収合併を見ても太陽神戸三井だの三菱東京UFJだの、みんな名前を残そうとする。いかに女性は男性の家に吸収合併されてきたことか」などとユーモアを交えて話すと会場は沸いた。泉徳治元最高裁判事や野中広務元議員、古賀伸明連合会長など、各界からの応援メッセージも読み上げられ、改正実現のアピールが採択されて閉会。集会後、金澄道子・日弁連両性の平等に関する委員会委員長は「次期国会に見送りという報道もあって気落ちしていたが、頑張らねばと元気が出た。集会は議員に働きかけるきっかけにもなる」と活動の意欲を見せた。
しかし、閣僚の亀井静香氏が選択的夫婦別姓に強硬に反対している現況では閣議決定ができない。小宮山議員は「長男長女のカップルでお互いに家族の名前を残せないために結婚できない人もいる、と亀井議員に言っても、いまの若い人はそんなこと気にしないよ、と言われる。では実例を連れてきます、と言ったのですが」と理解を求める苦労をにじませる。国民新党だけでなく、民主党議員の中にも反対派は相当数おり、採決の党議拘束をはずせという声もある。これには「与党で政府提出した法案に反対するなどとんでもない。改正案を提出してきた党の歴史を勉強してから言え、と言いたい」と憤る推進派の議員もいる。また「賛成反対双方の意見を聞いて」の勉強会も行なわれ、坂本洋子・民法改正情報ネットワーク共同代表は「一九九七年から改正案を提出してきた党なのに、今頃、何を勉強するのか」と苦笑しつつも説明に赴いた。ただ、「もし実現しなければ公約違反。今後の対応を考える」と視線は厳しい。
政策集で民法改正を謳う民主党の政権で改正しなければ、確かに公約違反だ。与野党合意の法案提出期限が一二日に迫り、千葉景子法務大臣は期限にこだわらず提出をめざす意志を表明したものの、厳しい情勢には変わりない。高まった期待ゆえに実現できなければ失望も大きい。今、民主党に実現力があるか否かが試されている。
(みやもと ゆき・本誌編集部 2010年3月12日号)
【タグ】「別姓訴訟」と家族法