選挙入場券の世帯一括送付に反対 「有権者一人ひとりに」仙台市に要望
2010年6月29日5:54PM
宮城県仙台市では、七月に行なわれる第二二回参議院議員選挙から入場券(投票について日時や場所を示す案内はがき)の送付形式を、これまでの有権者一人ひとりに対しハガキで入場券を郵送する方式から、圧着式封書により、世帯主あてに世帯分をまとめて送付する方式に変更することを決定した。
これに対し六月一一日、市内のNPO法人「イコールネット仙台」、「リプロネットみやぎ」など三〇団体が、従来通り入場券を個人ごとに送付することを求め、「参議院議員選挙 投票所入場券の配付方法について要望書」を市選挙管理委員会委員長宛に提出した。
次回選挙の入場券送付方法の変更を明らかにした六月一日付の仙台市広報によれば、圧着式の封書を開くと中に世帯内の有権者の入場券が印刷されており、それを一人分ずつ切り離して入場券にすると説明している。
入場券送付方式の変更について、市民団体などからは、①個人の人権としての参政権の保障という点で、世帯主とそうでない人との差別が生じることになる、②「個」を基本とする男女共同参画社会基本法の理念をはずれるものである、などの声があがっている。
要望に対し、仙台市選挙管理委員会は、
「二〇〇九年一二月に総務省から事務連絡があった。世帯ごとの配付は国が行財政刷新会議で決めたとの方針であるし、他の政令指定都市の多くは世帯での送付をしている。世帯ごとの郵送によって仙台市は九〇〇万円の経費節減が認められる。(今回についてはシステム変更で一〇〇〇万円ほど費用がかかったので、経費節減については次回以降となる)また、仙台市では早い段階で国民投票用のコンピュータシステムへの変更作業を行ない、選挙人名簿についても同様に変更をしたので他政令指定都市よりも世帯単位への移行を早めに行なうことができた」
と、当初は変更についてはしかたがないという対応だった。
世帯単位の一括送付となった場合、DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者などが家から出ている時、従来の個人宛ならば一人だけ転送可能だったものが、世帯ごとでは、一部だけ転送することができなくなる。
さらに世帯主宛では世帯主が開封するまでは他の世帯員が入場券を受け取ることが困難になる可能性がある。また、「二〇歳を迎えた有権者が、初めて自分宛に個別の入場券が届くことによって、自分が大人になったことを自覚し、投票につながった」との例もあるなど、世帯主一括送付についての問題はさまざまだ。
そもそも昨年一二月に総務省からの通達が来た時点で、入場券を受け取る市民や関係する市の部局に変更の是非について問うことをしなかったのは問題である。仙台市には、参政権という個人の持つ権利を尊重する市としての姿勢を示すことを要望する。
最後に仙台市選挙管理事務局長からは「世帯でくくることに対して想定外の指摘、たとえばDV被害の当事者と通信の秘密の問題などに影響があるのではないかということについてなど、今回は日程が迫っているので間に合わないが、ご意見を聞きながら変えられるところはやっていく。また、入場券がなくても投票できるという広報をしっかりやりたい」との発言があった。
要望書提出後には、賛同団体のメンバーらによって仙台市市民局・男女共同参画課で要望についての報告がされた。
六月開催の仙台市議会でも、これまでの個人宛送付にするよう複数の議員が質問をしている。参議院議員選挙公示後、入場券が実際に送付されることになれば、市民から疑問や抗議の声があがることも考えられる。仙台市には早急な対応が求められる。
なお、全国の政令指定都市では札幌、川崎、京都、広島、北九州、福岡の六都市については個人あてハガキで送付し、それ以外は世帯ごとの送付となっている(二〇一〇年五月現在・仙台市調べ)。
(樋口典子・別姓を考える会)