JR東日本が発電再開へ 調整池扶壁部に亀裂も 安全性に問題なし!?
2010年6月29日5:48PM
「信濃川発電所 発電再開のお知らせ」(以下「お知らせ」)というJR東日本旅客鉄道会社の告知広告が、六月一一日付『朝日新聞』など一三紙の朝刊に掲載された。しかし、これには看過し難い欠落がある。
まず、今回のJR東日本に対する水利権の許可期間は、二〇一五年六月三〇日までの約五年間に限定されたが、これについて一言も触れられていないこと。信濃川の自然や生態系は、昨年三月までのJR東日本による大量取水で大きく破壊された。取水を再開するのであれば、同じ過ちを繰り返さないこと、すでに破壊してしまった河川環境の回復を図ること等が、JR東日本の責務となる。五年という短い許可期間の設定は、いわばJR東日本の本気度を見る保護観察期間。単なる精神論や努力目標に終わった場合は、六年後の水利権更新は行なわない旨をきちんと公に誓うべきところだろう。
一方で粘り強く「水返せ」の活動を続けてきた市民は、五月二五日に「信濃川を愛するみんなの会」(樋熊清治会長)を立ち上げた。今回の許可内容では河川環境の回復は期待できないとし、今後の成り行きに目を光らせる。
もうひとつの欠落は、発電施設等の安全確保について触れられていないこと。とりわけ三つある巨大な調整池は、中越地震で亀裂が走った。活断層地帯にあり地盤も軟弱、しかも階段状に二つ調整池が造られていることから、付近住民から不安の声が聞かれる。
いまも山本山調整池の堰堤の一部になる扶壁部分には、接合部に大きな隙間が生じているし、他にも亀裂が目につく(左上写真)。国交省北陸地方整備局の技術者は、安全性に問題ない構造であり心配はないと説明するが、不安は残る。JR東日本は取材に対して、「地元や関係する皆さんと相談しながら進めています」と答えた。
(丸山昇・ジャーナリスト)