布川事件再審開始 43年前の起訴状に桜井氏怒り収まらず
2010年7月20日5:22PM
一九六七年に茨城県利根町で六二歳の男性が殺された強盗殺人罪で、桜井昌司さんと杉山卓男さん(ともに六三歳)が二九年間、懲役刑に服した布川事件の再審公判が九日、水戸地裁土浦支部で始まった。二四枚の傍聴券を求め七〇〇人近い希望者が抽選に並んだ。
罪状認否で桜井氏は「無実の証拠を隠し続けている検察官は私たちの無実を一番知っているはず」とし、杉山氏は「あの日は東京にいたから殺人などできない」と力強く述べた。
起訴状朗読では、桜井氏が「そんな起訴状読んで恥ずかしくないのか」と検察官をにらみつけて怒り、神田大助裁判長にいさめられる場面もあった。小学生の子どもがいる杉山氏は「殺人者の子どもというレッテルを外してやりたい」と述べた。
検察は被害者の手足を縛っていたシャツや口に詰められていたパンツのDNA再鑑定を求めたが、神田裁判長は次回(七月三〇日)以降に採否を持ち越した。弁護側は「現場で別人を見た」と供述した女性の証人尋問を求めた。
会見で桜井氏は「四三年前のそのままの起訴状を読まれて怒りが止まらなかった。検察は何一つ立証していない。無実の証拠を検察が隠していたことを明らかにさせたい」と話した。杉山氏は「落ち着いて臨んだけど桜井が興奮したので、こっちも止まらなくなりそうで危なかった」と笑わせた。
シャツやパンツは捜査官が取調室で二人の前に出した上、検察が再審公判前に裁判所から借り出しており、鑑定材料としての信用性はゼロである。検察は取り調べのテープも隠しつづけていた。
(粟野仁雄・ジャーナリスト)