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熊本県が水俣病認定棄却の女性、大阪地裁が認定を命じる

2010年8月6日3:03PM

環境省の椎葉・特殊疾病対策室長(右)に要望書を渡す田中弁護士。(撮影/奥田みのり)

 大阪地方裁判所は一六日、熊本県が水俣病だと認定しなかった原告女性について、国の水俣病の基準(一九七七年判断条件)には医学的な証拠がないとし、女性を水俣病と認定するよう命じた。原告の代理人である田中泰雄弁護士らは二〇日、環境省に、判断条件の見直しと、控訴の断念を申し入れたが二二日、熊本県は控訴した。

 判決は、七七年判断条件の複数の病状の組み合わせを否定し、四肢末端の感覚障害のみでも水俣病であることを認める内容。現行の基準では認定されない人を対象に、特措法による未認定患者の救済を進めている環境省にとって、判決は大きな打撃だ。基準が見直されれば、特措法より補償の手厚い認定申請に人が流れ、計画通りに救済が進まない可能性があるからだ。

 二〇日、国と県は、代理人との話し合いを午後に控えるなか、控訴の意向を午前中に発表した。田中弁護士らに控訴の理由や、国の基準が否定されたことについて意見を求められると、椎葉茂樹・特殊疾病対策室長は、「これまでの上級審の判断と異なるため」と何度も繰り返した。急いで控訴を決めたことについては、「(特措法による)救済を進めてほしいという声もあり、そうした人に安心してもらえるよう、早く控訴を決定した」と説明した。

 申し入れに同行した支援者からは、鳩山由紀夫前首相が五月に国の責任を謝罪した姿勢からすれば、控訴は理解しがたいという意見があった。

 裁判で、国・県・チッソの責任を係争中の水俣病被害者互助会の事務局・谷洋一氏は、「本来なら政権が変わった今こそ、幅広い救済を認めるよう環境省を変えるチャンスだった。控訴は、怒りを通りこして残念としかいいようがない」と環境省の姿勢を振返った。

(奥田みのり・ライター)

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