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武富士債権まとめ買いの貸金業者――「富士クレジット」にヤミ回収疑惑

2010年12月1日8:24PM

 九月二八日に会社更生法を申請した「武富士」が、今年五月から六月にかけて、顧客への返金義務がある「過払い」債権を売却して利益を得ていた問題で、あらたな疑惑が浮上した。これらの債権を買い取った貸金業者「富士クレジット(株)」(大阪市中央区、大岩秀幸社長)が、社員にノルマを課すなどして徹底的な回収を行なっている事実が判明したのだ。

 弁護士法やサービサー法(債権管理回収業に関する特別措置法)により、債権回収業は法務大臣の許可を得たサービサー(債権管理回収業者)か弁護士しか営むことができない。富士クレジットはサービサーの許可を持っていないことから、「ヤミ(無許可)回収業者」の疑いが濃厚となってきた。

 一一月一二日、筆者は大阪市淀川区にある富士クレジットの「回収センター」を訪れた。その際の様子は次のとおりである。

  入り口付近から視認できただけで一〇人ほどの社員がせわしなくパソコンを操作したり、電話をかけている。断片的だが、「武富士の……」「ご入金のほうを……」「お帰りは……」などと言った言葉が聞き取れる。見えているのは一〇人ほどだが、部屋の奥は広そうで三〇人から四〇人はいるようだ。壁を見ると数字を書き込んだグラフが何枚も張ってある。グラフの線は右肩にあがっている。目を凝らすと、「責任者」の名とともにこう書かれていた。

「保有件数二二九四件 回収件数六八九件」「保有件数二三〇二件 回収件数六九一件」

「回収件数」は一一月の達成目標らしい。

  グラフ線の下には表があって、「日付」「目標」「実績」などの項目に沿って細かい数字が書き込まれている。また、別の場所には「個人別回収目標件数」と題された表も張られている。

 「武富士の債権も回収しているんですね」

 応対した高原健一・営業本部課長代理に質問したところ、高原課長代理はそれを認めたうえで「通常の回収業務を行なっています。それ以上は本社に聞いてほしい」と答えた。疲労した様子が窺えた。

  大阪市中央区の富士クレジット本社に足を運び、峠秀岳・お客様相談室長に尋ねた。

――武富士の債権を回収しているのですか。

 武富士とウチは関係ありません。

――過払い分も含めて武富士から債権を買っていることは債権譲渡登記からも明らかですが。

 これ以上は答えられません。

――過払い債権をなぜ買ったのですか。

 お答えできません。

――無許可回収、サービサー法違反になりませんか。

 お答えできません。

――なぜ?

 上の判断で答えられません。

  けんもほろろの対応であった。

 富士クレジットの会社謄本を確認したところ、武富士の会社更生法申請から三日後にあたる一〇月一日付で、東京都港区に新支店を開設していることもわかった。貸金業者が軒並み事業を縮小したり廃業する時代である。そうした状況下での新支店開設は目を引く。支店は、買い取り債権の回収を行なう「回収工場」ではないのか。その可能性は拭いきれない。

  富士クレジットがいささか怪しげな業者と債権を売り買いしている様子も浮かんできた。たとえば「(株)ティー・アンド・エス」(東京都港区、珊瑚昭英社長)という貸金業者がある。旧名は「(株)貴善」(黒田武稔社長)。時効を迎えたような不良債権をサラ金から買い取り、多額の延滞金を加えて「最後通告」などと書いた督促状を送りつけるなど、悪質な取り立てで知られる会社である。

 サービサー法は、こうした悪質な回収による被害を防ぐための法律である。二〇〇八年には大阪地検特捜部が無許可回収の同法違反で貸金業者「レオン」の社長を逮捕・起訴した。だが結局のところ、ヤミ回収業者の捜査は五月雨式で、大半が野放し状態。頼みの大阪地検は身内のスキャンダルでおおわらわという有様だ。

 (三宅勝久・ジャーナリスト)

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