学校給食のデータに多数の不審点 渋谷区教委が公文書改竄か
2010年12月10日3:22PM
東京・新宿から電車で五分ほどの場所に位置する渋谷区笹塚。昔ながらの商店街と住宅街が混在する地域に位置する渋谷区立笹塚中学校で、少なくとも二〇〇七年から〇九年の間、生徒に出されていた給食が文部科学省の定める一食あたり必要なエネルギー摂取量を下回っている可能性が浮上している。エネルギー摂取量については学校給食法に定めがあり、同中がそれに抵触している恐れもある。
文科省の定める生徒一人当たりの平均所要栄養量の基準によると、当時、中学生のエネルギー摂取量は「八三〇キロカロリー」と定められており、誤差はプラスマイナス一〇%とされているが、笹塚中ではその基準を下回るエネルギー量だったことが常態化していたものとみられる。
給食は通常、給食室で作られる「自校式」と給食センターで一括して作られる「センター方式」に大きく分けられる。今回問題になっている笹塚中を含め、渋谷区内の中学八校は全て自校式を採用している。さらに、給食のメニューについては、渋谷区教育委員会(区教委)や学校に配置された管理栄養士が保護者から支払われた給食費を基に献立を決めるのが通常だという。問題のあった時期には、八校のうち四校に東京都から派遣された管理栄養士を配置していたが、笹塚中については他の四校をまとめて監督する管理栄養士が区教委に配置されていた。
今回の問題が表面化したのはある女子中学生の一言がきっかけだった。「中学の給食が美味しくない」。区立小を卒業後、笹塚中に進学した直後のことで、母親は当初その言葉をにわかに信じられず、娘を叱った。「人が作ってくれたものを感謝して食べなさい」。この母親は「行政が作る給食がでたらめだなんて、その時は疑うこともなかった」と当時を振り返る。
〇九年、この母親はPTA役員に就任したことで保護者の一部から「給食がまずいから何とかして」と言われるようになったという。そこで母親は在校生の保護者を対象にして、給食に関するアンケートを実施。保護者からの回答には、「給食の量が少ない」「いつも子どもが『お腹が空いた』と漏らしている」「原因は給食費の未納か」などの声や、給食費の決算書を要求する多数の意見が寄せられた。
そして同年七月、保護者の一人が区教委に対して中学校給食の記録に関する書類を情報公開請求したところ、約一八〇枚の記録が開示されたことを機に、不審な点が発覚した。
本誌が入手した資料のうち、〇八年七月七日の記録によれば、カロリーが生じないはずの水に八九キロカロリーと記されていたり、別の日には保護者が納入している一食あたり三一三円の給食費を大きく下回る一四一円で給食が作成されるなど不審な点が随所に見受けられた。
同一の資料について、これまでに母親は区教委に対して情報公開請求を数回実施してきたが、公開された書類は同一の内容ではなく、バツ印が付けられたり書式自体が大きく変更されていたりと、区教委が何らかの理由で書類を書き直し、改竄した可能性が窺える。
さらに、資料に押印されている捺印について、本人は「押印していない」と主張しているものまで存在する。この件については今年六月一〇日、渋谷区議会において芦沢一明議員(民主)が質問をし、問題にもなっている。
本誌は、渋谷区教委に対して資料改竄に関する事実を問いただしたが、「答える段階にはない」と事実上の回答拒否だった。
エネルギーデータの改竄、無承諾押印……疑惑の背景に何があるのか、今後明らかにしていきたい。
本誌取材班