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「水俣条約」という名に異論も――千葉・幕張で水銀条約交渉
2011年2月15日6:32PM
二〇一三年の水銀規制条約成立をめざし、国連環境計画(UNEP)が主催する政府間交渉委員会の第二回会議が、一月二四日から二八日まで千葉・幕張で開かれ、約一三〇カ国からおよそ六〇〇人の各国代表、NGO関係者らが参加した。
日本政府が水銀条約を「水俣条約」と命名することを提案したのに対し、同会議に参加した胎児性水俣病患者の坂本しのぶさんらは、「本質的な水俣病の解決がされないかぎり、条約名に水俣の名を使うべきでない」とアピール。これに、七〇〇以上のNGOが所属するネットワーク組織「IPEN」や、インドやフィリピンなど各国の政府関係者が賛同した。
フェルナンド・ルグリス議長は、「しのぶさんのためにも、世界のため、将来世代のためにも、頑張って良い条約をつくります」と語り、握手を交わした。
日本政府は「水銀規制に関する条約推進事業」を新設し、六三〇〇万円を一一年度予算に計上。交渉を円滑に進めるため、UNEPに資金拠出を行ない、途上国への水銀管理技術の普及を強化していくという。
しかし、水銀輸出禁止の姿勢を打ち出したEU(欧州連合)や米国に比べて日本政府の取組みは遅れており、アジアで水銀を輸出している国はキルギスと日本だけになった。「日本からシンガポールや香港などに輸出後の水銀の行方を確かめるシステムがなく、途上国の小規模金採鉱に使用され、労働者や環境に悪影響を与えている可能性が十分ある」と、会議に参加した化学物質問題市民研究会・安間武さんは指摘する。
水俣湾では、有機水銀を含むヘドロが一九九〇年に設置された耐用年数五〇年ともいわれる鉄板で水俣湾と区切られ、埋め立て地の下に閉じ込められている。また、水俣病被害の全容把握に不可欠な住民調査が実施されていない段階で「水俣病の教訓」と、問題を総括してしまう政府のやり方には疑問が残る。
環境省の南川秀樹事務次官は「水俣条約」という名に反対の意見があることは承知しているとした上で、「条約の内容は、検討が始まったばかり。条約交渉の進展をふまえながら、水俣で意見交換会を開いていきたい」とコメントした。
(奥田みのり・フリーライター、2月4日号)