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「君が代は慣習法だった」との判決――予防訴訟、高裁で逆転敗訴
2011年2月17日6:47PM
「卒業式等の君が代強制を強化する都教育委員会の一〇・二三通達と校長の起立・伴奏命令に従う義務はなく、不起立等への処分は違憲・違法」との、都立学校教職員側全面勝訴の一審判決(二〇〇六年九月)に対し、都教委側が控訴していた「日の丸・君が代」予防訴訟で、東京高裁(都築弘裁判長が定年。三輪和雄裁判長代読)は一月二八日、教職員側逆転敗訴の判決を出した。
判決はまず、通達発出の経緯を「教職員の不起立等の状況を、都教委が不適正と考えた」からだと、都教委の主張を事実認定。だが別件訴訟では、都教委側校長すら「通達前は不起立等を問題視していなかった」との趣旨で証言していることから(昨年一二月二四日号本欄)、通達は横山洋吉教育長(当時)が、一部右翼都議や教育委員と実質合体して発した政治的産物、というのが真相なのだ。
判決はまた、訴訟要件に関し「起立等の義務不存在確認と処分差し止めは、校長の職務命令でなく通達の取消又は無効確認の訴訟を提起するのが適切だ」とし、門前払いで訴えを却下した。
他方、「損害賠償請求」については、最高裁ピアノ判決(〇七年)を丸写しし「全国の公立高の卒業式等で国旗掲揚・国歌斉唱・ピアノ伴奏は従来から広く実施され、スポーツ観戦でも観衆等の起立は一般に行なわれている」などと理由を付け、「式典出席者に対し一律の行為を求めること自体に合理性あり」とし、「憲法一九条の思想・良心の自由を侵害しない」と棄却した。その際、「君が代が国歌であることは、国旗国歌法制定前から国民の法的確信が成立し、慣習法になっていた」との踏み込んだ見解も提示。「君が代は宗教的、政治的に国民の間で価値中立的と認められるには至っていない」と判じた一審判決を取り消した。
閉廷後の会見等で、教員側の加藤文也弁護士や原告教諭は「生徒の人権や自由を守るためにも上告し、最高裁で大法廷を開かせピアノ判決を変えさせたい」と述べた。
なお枝野幸男官房長官は一月二八日の記者会見で、この判決に関連し「国旗・国歌の指導は各学校で適切に行なわれる必要がある」と述べており、文科省対策も重要だ。
(永野厚男・教育ライター、2月4日号)