農業用水の確保は可能――開門反対派論拠に疑問符
2011年2月27日6:57PM
諫早湾干拓事業の潮受堤防開門問題で菅直人首相は一月三一日、中村法道・長崎県知事らが出していた公開質問状(二三項目)に文書で回答した。しかし中村知事は「具体的な回答がほとんどない」「農業用水の代替水源も検討課題としていた」などと反発。地元の開門反対派は「水門開門をすると農業が続けられなくなる」と訴訟の構えもみせている。
一方、一月二三日に同市を訪れた鹿野道彦農水大臣は意見交換会で「下水処理場の再生水を代替水源として検討」と発言。これに対し中村知事は「既に検討して使用困難という結論を出した」と反論した。公開質問状にはその理由を「全窒素(濃度)が農業用水の基準の八倍高い」と記していた。
しかし下水処理の行政担当者はこう話す。
「国交省は下水処理場の再生水の利用を推奨し、すでに六・九%が農業用水として使用されています。『窒素濃度が基準の八倍』と言っても、薄めて使えばいいだけの話。実際、長崎県内でも川の上流で再生水を注ぎ込み、下流で薄まった河川水を取水している地区もあります」(行政担当者)
国交省下水道部の資料「我が国における下水処理水の再利用状況」には、「下水処理水年間一三九・三億立方メートルのうち、再利用量は約二・〇億立方メートル(再利用率一・五%)」のデータとともに、「農業用水等の再生水利用事例(香川県多度津町)」も紹介されていた。
その説明図には、下水処理場から再生水プラントを経て再生水が河川放流されたり、農業用溜め池に注ぎ込まれたりする様子が描かれている。
この国交省の資料を中村知事らが見ていないのなら情報収集不足も甚だしく、見た上で「使用困難」と主張していたのなら、詐欺師紛いと言われても仕方がないだろう。
(横田一・フリージャーナリスト、2月11日号)