【米国】 原子力推進に警鐘――「日本から教訓得る」と大統領
2011年4月19日9:12PM
ペンシルバニア州スリーマイル島で起こった原発事故から約三〇年、米国内ではその記憶も薄らぎ中東原油依存を断ち、原子力エネルギー生産を推す機運が高まってきていた。その矢先に起こった日本の原発事故で、米国内の原発施設の見直しが求められている。
米国には現在一〇四基の原発が稼働し、国内電力の約二〇%をまかなっている。オバマ大統領は、原子力エネルギー推進派。この点では共和党と歩調が合っている。二〇一二年会計年度予算で、原発建設に三六〇億ドル(約二兆九五〇〇億円)の融資保証を提案。現在三基が建設予定で、中でもジョージア州の二基には、連邦政府から八〇億ドル(約六五〇〇億円)の融資が保証されている。
福島原発の事故後、米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長は、「国内原発は日本に起こった災害に対応できる」と強気な姿勢を示したが、その安全性を疑う声が上がり始めた。
三月一七日、環境・原子力監視団体「憂慮する科学者同盟」(UCS)は、昨年一四基に安全上の問題があったとするレポートを発表、NRCの監視の甘さを指摘した。これは三月一六日、下院エネルギー対策小委員会で議題となった、原発の安全性への懸案事項と一致する。
懸念事項の中には原発の老朽化がある。一〇四基の内、約半数は建設後三〇年以上経つ。二三基の原子炉は福島第一原発と同じタイプで、四〇年以上前にゼネラル・エレクトリック社によって開発されたものである。バーモント州のヤンキー原発もこの中に入る。福島の事故以来、議員や市民団体からヤンキー原発閉鎖を求める議論が活発化している。
一方、市民レベルでの原発恐怖も高まっている。日本からの放射性物質が西海岸へ達することを恐れ、また原発に不信を抱く市民の間で、ヨードカリ錠剤など放射能緊急品を買い占める動きが目立つ。
そのような市民の不安を払拭する目的で、三月一七日オバマ大統領は「米原子力発電所は、大自然災害にも耐えうる」と強調した。その上で「日本の危機から教訓を得て、米国民の安全を確かにする」と話した。そのために「原発施設の包括的見直しを考える」と述べ、「原子力は将来のエネルギーに不可欠」と原子力推進の意向を再強調した。
(マクレーン末子・ジャーナリスト、3月25日号)