【ドイツ】全国各地の抗議行動が圧力に――原発推進政策の方向転換へ
2011年4月20日2:14PM
三月二一日、ドイツの首都ベルリン中心部にある首相官邸前で、国内各地にある原子力発電所の即時運転停止を求めるデモが開かれた。
ドイツ政府は三月一四日に「老朽化した稼働中の原発の稼働延長を三カ月凍結」、翌一五日には「旧型原発七機の一時停止」をすでに発表しているが、これは福島原発の大事故を目の当たりにしたことだけでなく、一二日からドイツのシュトゥットゥガルトの六万人デモを皮切りに、突如として広がった全国各地での大規模な抗議活動が大きな圧力となったと思われる。
反原発政策を掲げる社民党との連立を二〇〇九年に解消し、自民党と連立を組んで原発推進政策を採り続けてきたキリスト教民主同盟だが、その方向転換を迫られる形となった。メルケル首相は三月一二日に「ドイツの原発は安全」と強調したが、その発言内容を裏付ける根拠が何もないことを認め、とりあえずの措置として稼働延長の凍結と旧型機の停止を決めた。
もともとドイツでは反原発意識は強く、一九七〇年代から原発の停止と廃絶を訴えるデモや集会が頻繁に開かれてきた。政治の世界でも二〇〇〇年に社民党と九〇年連合・緑の党の連立政権のもと、政府と電力業界が協定を締結し脱原発を宣言している。多くの国民の中に「原発は安全ではない」という意識が定着してきたといえよう。
今回のデモでは震災の犠牲者を追悼するキャンドルが灯されるなか「福島は警告する すべての原発を即時停止せよ」「福島は日本だけでなくここにもある」といったプラカードを手にしたベルリン市民約三〇〇人が集い、日本語で「原子力? おことわり」と書かれたものも見受けられた。参加者の一人は「今後放射能汚染で命を落としてしまうかもしれない人たちのことも追悼している。放射能は時間をかけて生命体を破壊していくものだから」と語った。
(矢嶋 宰・フォトジャーナリスト、4月1日号)